冷たいキスなら許さない
「過去の自分のことは私にとって黒歴史、ホントに真っ黒なの。でも櫂と過ごして楽しかった日々のことは黒歴史じゃない」
ははっと小さく笑って、
「だから、櫂は私に謝らなくていい」
そう伝えた。

「灯里ーーー」
目の前に座る櫂の瞳がぐらっと揺れたように見えた。

「あの時、櫂が追いかけてくれたとして・・・お付き合いが続いたとしても多分、その後結局うまくいかなくなってたと思う。きっかけは西倉恭香サンだったけど、それがなくてもいずれダメだったと思うんだ。今ならそれがわかる」

再会してから考えていた私の想いを真っ直ぐに伝える。
櫂は私の視線を避けるように黙ってテーブルに両肘をついて何か考え込むように頭を抱えた。

そんな姿を見て私も口を閉じた。

じゃああの頃、どうすればよかったのかなんてことがわかったわけじゃない。
ただ、ダメだったなって思った。

はあー
突然、大きく息を吐いた櫂が顔を上げた。

驚いて私も顔を上げるけれど、そんな私の視線をなおもそらして櫂は奥の席の壁にかかった絵画の方をぼんやりと見ている。
< 299 / 347 >

この作品をシェア

pagetop