冷たいキスなら許さない
「悪いと思ってないんでしょ。口先だけの謝罪はいらないんですけど。本当はあなたは私に何が言いたいんですか」
そもそも何のために待ち伏せしていたんだ。

「ごめんなさい。そういうことじゃないの。４年前のことも今は悪いと思っているのよ？」

”今は”って言った？

いちいちこの人の発言が私の心にひっかかる。
それにもう泣き真似をするつもりもないらしく、今は片眉を上げたり、口角が上がっていたり。

「私ね、最近までヨーロッパにいたのよ。父の会社の市場調査でね。でも、それはただの名目で実際は日本から追い出されてたってわけ」

「４年前、あなたがいなくなった後で、私は櫂とやり直したくて何度も会いに行ったの。それがいわゆる”迷惑行為”になっているなんて知らなかった。ましてや、実家の両親に櫂が私のことを相談していたことも」

西倉恭香の話が本当だったとしてもどう反応していいのかわからない。

「この４年間で帰国したのは数えるほど。帰国しても私に自由時間はなくて櫂に会うことも連絡することもできなかったわ。ネットで櫂の名前で検索したらイースト設計の建てた図書館の設計者の中に櫂の名前があったの。イースト設計を調べたらそこに私の知人が働いているのを知って・・・知人に連絡を取ったの。櫂が今どうしているか知りたかっただけ。初めはね－－本当よ」

口を開くことができなかった。
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