冷たいキスなら許さない
「元気にしていればいいって思っていた。あれから4年もたっていたから、もしかしたらその後で出会った誰かと結婚してるかもしれないと思った。私は人づてに櫂の話を聞くだけで満足だったの。本当よ」

それが本当か嘘かなど私にはわからないけれど、本心じゃないだろう。

「ーー先日の鎌倉のパーティー。櫂もそうなんだけど、まさかあなたまでいるとは思わなくて」

白々しい、そう思った。

「あのパーティーの招待状にはイースト設計の名前が入っていたはずだけど。櫂のことをずっと気にしていたのならそれに気が付かなかったとは言わせない」

「ええ・・そうね。そう。もしかしたら櫂に会えるかもと思った・・・」

結局何が言いたいのだろう。

「パーティーの後、櫂の代理人弁護士がうちの会社にやってきたの。驚いたわ。だってあの時に私は遠くから櫂を見ていただけ。話しかけたり近くに行ってもいないのによ」
さっきまで隠していたんだろうけれど、今は私を見る西倉恭香の目にうっすらと怒りが浮かんでいる。

「それなのにストーカー扱いってひどくない?私は何もしてないわ」
”何も”という言葉に私の眉がビクッと反応した。

それに気が付いた西倉恭香が慌てて「あなたには化粧室でひどいことを言ってしまったけど」と付け足した。

ああ、やっとわかった。
なぜ、この人が私を待ち伏せしてまで会いたかったのか。
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