冷たいキスなら許さない
私の表情を見て櫂が運転席に近付いてきた。この状況では逃げられない。

仕方なく無言で15センチほど運転席の窓を開けた。
櫂は背中を折って少しだけ開いた窓に顔を寄せてくる。

「灯里。4年振りだ。いつからここに?」

問いかけてくる櫂に返事をせず黙ったまま視線をそらした。

何といえばいい?私はこんなにも心が痛い。過去の傷はまだ癒えていない。まだズキズキと痛むのだ。

「・・・次の予定があるので失礼します」

ちらりと横目で櫂の顔を見ないように姿を目に入れると、櫂を轢かないようにゆっくりと車を発進させた。

「灯里っ!」

ポンっと音がして櫂がドアに触れたらしい。

私を引き留めようとしたのか無視されたことに腹を立てたのかどっちなのかはわからない。

でも今さら私に用なんてないはずだ。
私たちはきっぱりと別れたんだから。いや、4年前に私はきっぱりと捨てられたんだから。

待ち伏せ?

まさか私が出てくるのをずっと待ってたわけじゃないだろう。

ドキドキする心臓とこみ上げてくる吐き気に似た悪寒。
まさに悪夢のような再会だ。

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