冷たいキスなら許さない
「うん、そのキツイまなざしもエキゾチックで素敵だね」
この勘違い男は私の怒った顔など怖くもなんともないらしい。

はあっと息を吐いて自分のつかまれた左腕の手を大きく広げて金髪男の手首を反対にギュッとつかんだ。
ん?と男の顔に疑問が浮かび一瞬力が緩んだところで、その腕を上に持ち上げると簡単に私を掴んでいた腕が外れた。
男が驚いて隙ができたところでドンと身体を押しのけるてやると、よろっと男の身体が2、3歩後退する。

簡単な護身術の一つだけど、効果はてきめん。
力を入れずに男の身体を押しのけられる。
ただ、二度目は通用しないから早くその場から逃れることが大事。

セクハラ部長の時と違って今日は冷静な判断ができている。足早にここから離れようと歩き出そうとしたらドンっと正面から誰かとぶつかってしまった。

「ごめんなさ・・・」
ぶつけた鼻をさすりながら口を開くと、
「大丈夫か」
と聞きなれた声が頭の上から降ってきた。

見上げると、そこには会いたかった大和社長が。
で、でも笑顔が、なんか黒い。黒いぞ。

「ただいま、灯里」
腰に手が回されたと思ったら、くいっと顎を持ち上げられていきなり唇が塞がれる。

ん、ん、んんー
こ、こ、こ、こ、ここ日本の空港ですけどー!!!!
心の中で絶叫。
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