冷たいキスなら許さない
社長に視線を向けると、彼は私に向かって顎でオフィスの隅にある大テーブルを指してきた。

はいはい、移動ですね。
黙って立ち上がりメグミちゃんの淹れてくれたお茶を持って移動する。

「おせんべいもどうぞ」
メグミちゃんが菓器に入れたおせんべいを置いてくれた。

ふうっと息を吐いておせんべいを袋から出すと、
「俺、せんべいはサラダ味がいいんだけど」
と不満そうな声が社長の口から洩れた。

「あら、これ大山建材の大山社長からの頂き物ですよ」
「大山社長の?」
メグミちゃんのひと言に社長が反応した。

素早くおせんべいを袋から出すとかじりつく。

「うまい」
「美味しい」

私たちは同時に声を出してしまい、メグミちゃんは満足げに頷いて自席に戻って行った。

< 4 / 347 >

この作品をシェア

pagetop