冷たいキスなら許さない
束の間の沈黙の後、口を開いたのは櫂だった。

「俺、灯里を助けられた?」

え?
思わず櫂の顔を見た。
珍しく不安そうに眼が揺らいでいる。

「ーーー穏便に話が済んで助かった」

「そうか、よかった。いらないことしてくれたって怒ってるのかと思った」

え?
「そんなこと、これっぽっちも思ってないわよ。ちゃんとお礼も言ったと思うけど」
しぶしぶ、確かに心の中で嫌々ではあったけれど。
それはホントに私の態度が悪い。

私の言葉に櫂がにこりと笑う。
「灯里、だったら俺が言葉じゃないお礼が欲しいって言ったら?上司のお礼でももちろんお金でもない。俺の欲しがる物でもらえない?」

え?お礼?何かお礼の物が欲しいの?



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