冷たいキスなら許さない
「今言った中に欲しいものがあったの?どれ?」

「いや、灯里が俺のこと忘れてないって思って。安心したっていうかかなり嬉しいよ」
キラキラとしたした笑顔を私に向けている。

は?何言ってんの。
これじゃまるで私がずっと櫂のことを好きだったみたいだ。

「そんなつもりじゃないから。自意識過剰もいいとこね。
素直に考えて損したわ。お礼の品をわが社からイースト設計の桐山さん宛てに郵送します。本当にお世話になりました」

ぷいっと顔を背けて立ち去ろうとした私の腕を櫂がつかんだ。

「何。ね、またなの?あなた昔、去る者追わずじゃなかった?」
冷めた視線を櫂に送った。

「追うのは灯里だからだよ」私の腕をつかんだまま櫂が真剣な顔をしている。

「それ、4年前だったら喜んでた。でも今の私はもう櫂を必要としてないから迷惑」
視線を一層厳しいものにして離してと目で訴えた。

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