冷たいキスなら許さない
「わかってる。お礼が欲しいなんて嘘だ。灯里が俺のことを忘れてないか知りたかったんだ。
・・・今更だって思うけど、どうしても謝りたい」

私の腕をつかんだままの櫂は一気にそう言った。

言われた意味がわからない。
私は身動きできず、ただ黙って櫂の目を見た。

「ごめん。あの時、灯里にあんな態度をとるべきじゃなかった。後悔してる」

「・・・ごめんって・・・後悔って何」

震える唇を動かしてやっとのことで声を出した。
櫂は今さら何を言ってるの。

全身から血の気が引いていく。また4年前の記憶が蘇る。
彼女の高笑い、一人ぼっちの部屋、櫂の冷たい視線を思い出して背筋が寒くなる。
記憶の暗い闇に引きずり込まれていくようで足に力が入らない。

「一体どうい・・・」
言いかけた言葉は続けることができなかった。

駐車場に入ってくる車のエンジン音がして我に返った。

ここが外で、仕事中だということを思い出して慌てて櫂の腕を振り払い距離を取った。
「こんなところでする話じゃないでしょ」
誰が見ているかわからないような場所で。
非常識極まりない。

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