冷たいキスなら許さない

すねていたらいつの間にか眠っていたらしい。
離れた所から聞こえるボソボソした話し声で目が覚めた。

社長と誰だろう…進さんかな。
ずいぶんぐっすりと眠ってしまった。ぼんやりとする意識が次第にはっきりしてくる。

はっ。
ここどこっ?

車で眠っていたはずの私が布団にくるまれてぬくぬくとしている。
身体をよじるとミシミシとベッドの軋む音がした。

社長のベッドだ!

瞬時に覚醒して飛び起きた。
とたんにベッドがぎしっと大きな音がして「灯里、目が覚めたか?」と部屋の外から声がした。

「はい目覚めましたっ」
微妙に声が裏返る。

まさか、社長のベッドでぐっすり眠りこけているとは。
車からここまで運ばれた時にどうして気が付かなかったんだろう。

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