冷たいキスなら許さない
***

翌日朝から一日かけてベッドを作り上げ、もう日が沈んでいて社長宅の縁側でふたりしてビールを飲んでいる。

「社長メイドの家具を売り出したら絶対売れますね」

社長はふふんっと鼻で笑う。
「せっかくだけどコストがかかりすぎて商売にならねぇなぁ」
「こだわるタイプですもんね」

「まぁな」
おつまみは進さんが作った焼き鳥。もしここに他の社員がいるとしたら争奪戦が始まるくらい焼き鳥は美味。
社長は塩派で私はたれ派だからわたしたちが二人だけでいれば奪い合うことはない。でも手羽先とつくねの大葉巻きはたれより塩の方が断然美味しいんだけど。

「やっぱりこっちは静かでいいな」
縁側から足を投げ出してぶらぶらさせながら呟く。

「こっちに戻りたいのか?」
社長は私を見もしないで手羽先と格闘している。

「戻りたいか戻りたくないかと言えば、もちろん戻りたいです。でもまだ、頼まれたスタッフ教育も事務処理のシステム作りのどちらも完了してません。戻れないこともわかってますから大丈夫ですよぉ」

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