千一夜物語-森羅万象、あなたに捧ぐ物語-
終章
「良夜様が正式にご当主となられた折には一族代表として幽玄町までお祝いに出向かせて頂きます」
「ん、そう遠くはないからすぐまた会えるな。それじゃ雨竜は俺に任せてくれ。必ず無事に成体にして今まで類を見ない九頭竜としての姿をお前に見せてやる」
乱青龍が死に、跡目を緑竜が継ぎ、緑竜が雨竜を認めたことで九頭竜一族は雨竜を温かく迎えてくれた。
家の中にも雨竜の兄弟が居て、九つの頭に九つの尾があったが、それをかっこいいとは思っても雨竜の吐く光線のような炎を見てしまったから、雨竜が一番だと半ば親馬鹿のような気分になって雨竜の頭を撫でた。
「よし、じゃあ帰るか」
「うん!じゃあ兄ちゃん、また来るね!」
「良夜様にご迷惑をおかけするのではないぞ」
そこは長兄らしく固いことを言いながらも緑竜の背をぽんと撫でた後、良夜は広間で寝そべっていた狼の腹を撫でながら訊いてみた。
「雨竜を乗せれるか?」
「脱皮して籠の中に入ってた時はあんな大きさじゃなかったから小さくなれるんじゃね?それだったらだいじょーぶ」
振り返った良夜は、話を聞いていた雨竜が尾をふりふりしながら頷いたのを見て目を輝かせた。
「お前小さくなれるのか?」
「うん多分。でもこれが俺の本当の大きさだよ。小さくなった方がいい?」
「ああ頼む。そうでないと幽玄町に着くのがかなり遅れてしまう」
良夜たちが見守る中、雨竜の身体はみるみる小さくなって脱皮前の大きさになった。
成体になる前からできることが多く、嬉しくなって雨竜を撫で回していると、雨竜も上機嫌になって良夜を簀巻きにするようにして抱き着いて尾を振り回した。
「美月!俺すごい!?」
「ええすごいですよ。私はお主を誇りに思います」
――美月に助けてもらえなかったら、きっと死んでいた。
雨竜は良夜を離して美月の背中に上ると、長い舌で美月の頬をぺろんと舐めた。
「早く帰ろっ」
自分の居場所に。
「ん、そう遠くはないからすぐまた会えるな。それじゃ雨竜は俺に任せてくれ。必ず無事に成体にして今まで類を見ない九頭竜としての姿をお前に見せてやる」
乱青龍が死に、跡目を緑竜が継ぎ、緑竜が雨竜を認めたことで九頭竜一族は雨竜を温かく迎えてくれた。
家の中にも雨竜の兄弟が居て、九つの頭に九つの尾があったが、それをかっこいいとは思っても雨竜の吐く光線のような炎を見てしまったから、雨竜が一番だと半ば親馬鹿のような気分になって雨竜の頭を撫でた。
「よし、じゃあ帰るか」
「うん!じゃあ兄ちゃん、また来るね!」
「良夜様にご迷惑をおかけするのではないぞ」
そこは長兄らしく固いことを言いながらも緑竜の背をぽんと撫でた後、良夜は広間で寝そべっていた狼の腹を撫でながら訊いてみた。
「雨竜を乗せれるか?」
「脱皮して籠の中に入ってた時はあんな大きさじゃなかったから小さくなれるんじゃね?それだったらだいじょーぶ」
振り返った良夜は、話を聞いていた雨竜が尾をふりふりしながら頷いたのを見て目を輝かせた。
「お前小さくなれるのか?」
「うん多分。でもこれが俺の本当の大きさだよ。小さくなった方がいい?」
「ああ頼む。そうでないと幽玄町に着くのがかなり遅れてしまう」
良夜たちが見守る中、雨竜の身体はみるみる小さくなって脱皮前の大きさになった。
成体になる前からできることが多く、嬉しくなって雨竜を撫で回していると、雨竜も上機嫌になって良夜を簀巻きにするようにして抱き着いて尾を振り回した。
「美月!俺すごい!?」
「ええすごいですよ。私はお主を誇りに思います」
――美月に助けてもらえなかったら、きっと死んでいた。
雨竜は良夜を離して美月の背中に上ると、長い舌で美月の頬をぺろんと舐めた。
「早く帰ろっ」
自分の居場所に。