千一夜物語-森羅万象、あなたに捧ぐ物語-
良夜の宣言通り、大量の料理が乗っていた皿は悉く空になり、美月は目を丸くして良夜の細い身体を上から下まで眺めた。
「あの量が…お主の身体のどこに入ったのですか…?」
「さあ、どこにだろうな?美味かったからいくらでも食えた。多分もっと食える」
「い、いいえ、もうありません!使っていない食材は後で保存食にして私が美味しく頂きますので」
「その時は俺も呼んでくれ。というか、日に一度はこうして食いに来るからまた作れ」
また食べれると言ったもののさすがにきつくなってごろんと横になった良夜がにこっと笑うと、美月はぱっと顔を逸らして台所に立った。
「お前は何故こうして人のように食うんだ?」
「さあ…物心ついた時からそうでしたから。母たちにも気味悪がられました」
「別に気味悪いとは思ってない。俺の家には伊能という人が出入りしてるんだ。饅頭や甘い菓子をよく持ってくるし、誰も食わないと分かっていても台所にはいつも食材がある。もしかしたらお前のように食う習慣のある者が居たかもしれない」
そうですか、と相槌を打った美月が皿を洗い始めると、良夜が隣に立って何を手伝うでもなく、今度は美月を上から下まで眺めた。
「ちょ…舐め回すように見るのやめて下さい」
「お前のようないい女だと、さぞ男に群がられただろう?」
「そうですね、ですが興味がありませんでしたので全てお断りさせて頂きました」
「興味がない?男にか?」
「さあ…何というか…誰かを待っているような…待たせているような…よく分かりませんが、私が求めている方ではないといつも思っていたので」
――同じような感覚を美月が持っていることに良夜はかなり驚き、急に無口になって美月を不気味がらせた。
「なんですか、私とて乙女です。馬鹿にすると罵りますよ」
「おお、罵るときたか。じゃあ今すぐ罵ってみろ。お前になら嫌な気分にはならないかもしれない」
また呆れさせて、無視されて、構いまくってまた無視されて、このやりとりがなんだか懐かしく感じて、やめることができなかった。
「あの量が…お主の身体のどこに入ったのですか…?」
「さあ、どこにだろうな?美味かったからいくらでも食えた。多分もっと食える」
「い、いいえ、もうありません!使っていない食材は後で保存食にして私が美味しく頂きますので」
「その時は俺も呼んでくれ。というか、日に一度はこうして食いに来るからまた作れ」
また食べれると言ったもののさすがにきつくなってごろんと横になった良夜がにこっと笑うと、美月はぱっと顔を逸らして台所に立った。
「お前は何故こうして人のように食うんだ?」
「さあ…物心ついた時からそうでしたから。母たちにも気味悪がられました」
「別に気味悪いとは思ってない。俺の家には伊能という人が出入りしてるんだ。饅頭や甘い菓子をよく持ってくるし、誰も食わないと分かっていても台所にはいつも食材がある。もしかしたらお前のように食う習慣のある者が居たかもしれない」
そうですか、と相槌を打った美月が皿を洗い始めると、良夜が隣に立って何を手伝うでもなく、今度は美月を上から下まで眺めた。
「ちょ…舐め回すように見るのやめて下さい」
「お前のようないい女だと、さぞ男に群がられただろう?」
「そうですね、ですが興味がありませんでしたので全てお断りさせて頂きました」
「興味がない?男にか?」
「さあ…何というか…誰かを待っているような…待たせているような…よく分かりませんが、私が求めている方ではないといつも思っていたので」
――同じような感覚を美月が持っていることに良夜はかなり驚き、急に無口になって美月を不気味がらせた。
「なんですか、私とて乙女です。馬鹿にすると罵りますよ」
「おお、罵るときたか。じゃあ今すぐ罵ってみろ。お前になら嫌な気分にはならないかもしれない」
また呆れさせて、無視されて、構いまくってまた無視されて、このやりとりがなんだか懐かしく感じて、やめることができなかった。