千一夜物語-森羅万象、あなたに捧ぐ物語-
数週間経った後、黎の息子は無事に祝言を執り行った。
その間息子はいつ父が傍から居なくなっても後悔しないよう、日々を黎と共にとても大切に過ごして、様々な話を沢山した。
特に神羅と澪と出会った時の物語は格別で、敢えてかいつまんでしか教えなかった黎は、酒を飲みながら含み笑いを浮かべていた。
「俺が死んだら、俺の書いた書物を見るといい。後世に遺るよう強力な術をかけたから、煮ても焼いても濡らしても破壊できない。どうだ、すごいだろう」
「父様がすごいことは百鬼夜行をやっていて分かりますよ。俺が引き継ぐ前から統制がしっかり執れていて、俺は先頭を行くだけな感じですからね」
「いや、百鬼は実力の伴わない者には心情が同じだとしてもついては来ない。お前の実力なんだ、自信を持て」
ここ最近息子と腹を割って話すことができた黎は、腰を上げて晴れ晴れとした表情で息子を見下ろした。
「じゃあ今日は早めに寝る。お前もまだ慣れない百鬼夜行で疲れているんだから早く休んで備えておけ」
「はい。おやすみなさい」
息子と別れた黎は、妙に身体と心が軽くなったのを感じていた。
憂うべきものが何ひとつなくなり、すべきことも何ひとつなくなった。
「そろそろか…」
床に横になり、”魂の座”のことを考えた。
もし辿り着けなかったら――そんなことを考えて、いやそんなことはないと強く否定するもうひとりの自分が居て、目を閉じた。
「連れて行ってくれ…」
――すう、と意識がなくなった。
意識がなくなったと同時に――黎は真っ白な世界にひとりぽつんと、立っていた。
「ここは…?」
辿り着いた。
‟魂の座”に――
その間息子はいつ父が傍から居なくなっても後悔しないよう、日々を黎と共にとても大切に過ごして、様々な話を沢山した。
特に神羅と澪と出会った時の物語は格別で、敢えてかいつまんでしか教えなかった黎は、酒を飲みながら含み笑いを浮かべていた。
「俺が死んだら、俺の書いた書物を見るといい。後世に遺るよう強力な術をかけたから、煮ても焼いても濡らしても破壊できない。どうだ、すごいだろう」
「父様がすごいことは百鬼夜行をやっていて分かりますよ。俺が引き継ぐ前から統制がしっかり執れていて、俺は先頭を行くだけな感じですからね」
「いや、百鬼は実力の伴わない者には心情が同じだとしてもついては来ない。お前の実力なんだ、自信を持て」
ここ最近息子と腹を割って話すことができた黎は、腰を上げて晴れ晴れとした表情で息子を見下ろした。
「じゃあ今日は早めに寝る。お前もまだ慣れない百鬼夜行で疲れているんだから早く休んで備えておけ」
「はい。おやすみなさい」
息子と別れた黎は、妙に身体と心が軽くなったのを感じていた。
憂うべきものが何ひとつなくなり、すべきことも何ひとつなくなった。
「そろそろか…」
床に横になり、”魂の座”のことを考えた。
もし辿り着けなかったら――そんなことを考えて、いやそんなことはないと強く否定するもうひとりの自分が居て、目を閉じた。
「連れて行ってくれ…」
――すう、と意識がなくなった。
意識がなくなったと同時に――黎は真っ白な世界にひとりぽつんと、立っていた。
「ここは…?」
辿り着いた。
‟魂の座”に――