千一夜物語-森羅万象、あなたに捧ぐ物語-
泉まで送ってやった良夜は、庭石に腰かけて帰りを待っていた美月に気付いていたものの、ある程度高度を低くして雨竜をぷらんとぶら下げた。
「なんとなく美月と顔を合わせづらいから、ここから落とすぞ」
「うん。次はいつ来る?明日の朝?絶対来る?」
舌をちろちろ出して目をきらきらさせている雨竜の舌をちょんと突いた良夜は、曖昧に首を傾げてとぼけて見せた。
「美月が俺を許してくれるなら、明日来る」
「!じゃあ俺が説得しとくから!明日だぞ!絶対だぞ!」
やけに懐かれたものだと目を細めた良夜は上空からなるべく優しく泉へ雨竜を投げ入れた。
頭からぽちゃんと水に入った雨竜がぷかりと頭を出すと、美月が立ち上がって見上げてきているのが見えたが――そのまま屋敷へと戻った。
「…なんなのよ…」
何故謝りに来ないのかと憤慨しながら何度か地団駄を踏んでいると、雨竜がすいすい泳いで美月の元まで行くと、目を輝かせながら饒舌に良夜とのぶらり散歩を語り始めた。
「あのね美月!良夜がいろんなとこ連れてってくれたんだ!美味い魚がいるとことか日向ぼっこするのに最高な場所とか!」
「そうですか、それは良かったですね」
雨竜が喜んでいるのは素直に嬉しい。
ずっと口数が少なくてしくしく泣いていることが多かったため、どう慰めてやればいいのか分からなかったから、それはとても喜ばしいことだった。
「良夜を気に入ったようですね」
「うん、すごくいい奴だと思う。俺を仲間にしたいって言ってくれたんだ。こんな俺を」
「仲間…」
雨竜を膝の上に乗せた美月は、何度かそう呟いて安堵していた。
百鬼夜行の主に――次期当主になる男の庇護下に置かれるならば、その身はもう安全と言っても過言ではないから。
「そうですか…」
…悪い男ではない。
……多分。
「なんとなく美月と顔を合わせづらいから、ここから落とすぞ」
「うん。次はいつ来る?明日の朝?絶対来る?」
舌をちろちろ出して目をきらきらさせている雨竜の舌をちょんと突いた良夜は、曖昧に首を傾げてとぼけて見せた。
「美月が俺を許してくれるなら、明日来る」
「!じゃあ俺が説得しとくから!明日だぞ!絶対だぞ!」
やけに懐かれたものだと目を細めた良夜は上空からなるべく優しく泉へ雨竜を投げ入れた。
頭からぽちゃんと水に入った雨竜がぷかりと頭を出すと、美月が立ち上がって見上げてきているのが見えたが――そのまま屋敷へと戻った。
「…なんなのよ…」
何故謝りに来ないのかと憤慨しながら何度か地団駄を踏んでいると、雨竜がすいすい泳いで美月の元まで行くと、目を輝かせながら饒舌に良夜とのぶらり散歩を語り始めた。
「あのね美月!良夜がいろんなとこ連れてってくれたんだ!美味い魚がいるとことか日向ぼっこするのに最高な場所とか!」
「そうですか、それは良かったですね」
雨竜が喜んでいるのは素直に嬉しい。
ずっと口数が少なくてしくしく泣いていることが多かったため、どう慰めてやればいいのか分からなかったから、それはとても喜ばしいことだった。
「良夜を気に入ったようですね」
「うん、すごくいい奴だと思う。俺を仲間にしたいって言ってくれたんだ。こんな俺を」
「仲間…」
雨竜を膝の上に乗せた美月は、何度かそう呟いて安堵していた。
百鬼夜行の主に――次期当主になる男の庇護下に置かれるならば、その身はもう安全と言っても過言ではないから。
「そうですか…」
…悪い男ではない。
……多分。