千一夜物語-森羅万象、あなたに捧ぐ物語-
最初に雨竜の住む泉へ寄った良夜は、待ち構えていた雨竜がすぐさま腕に巻き付いてきてその細長い身体を撫でた。
「美月の様子はどうだった?」
「うん、最初は怒ってた感じだったけど、今は多分落ち着いてる。良夜は美月が好きなのか?」
「親父と同じようなことを言うな」
また後で来ると言って雨竜を泉に戻らせた良夜は、境内の庭を掃いていた美月とばっちり目が合ったものの――ぷいっと顔を逸らされて、小さくため息をついた。
「美月」
「…おはようございます。もう朝餉は食べてしまいましたから、お主の分はありませんよ」
「ん。ところでまだ怒っているな?」
指摘されてますます頬が膨れた美月は、箒をどんと地面に差して腰に手をあてて居直った。
「それが何か?」
「いや、すまなかった。お前があまりにも可愛い顔をしていたから」
「!そ、そこらの女にかけるような口説き文句など吐き気がします!一緒にしないで!」
「お前まさか俺の噂話を耳にしているな?あれには尾びれ背びれがあって…」
「その噂話とやらを総合してもお主が果てしない女遊びをしている事実に変わりありません。女を抱きたいのであればよそをあたって下さい」
何故か微妙に焦った良夜は、美月の手から箒を奪い取って境内を掃きながら呟いた。
「今まではそうだった。これからは…やめる」
「何故やめるのですか?探し求めている女を探し当てるには必要なことなのでは?」
そう問われると――何故やめると言い出したのか自らが理解できなくなった良夜が言葉に詰まって無言で庭を掃いていると、美月は肩で息をついて塵取りを差し出した。
「…とにかく軽い気持ちで私に手を出そうとしたことはもう咎めません」
「それは良かった。礼に何かしたいが…」
「結構です」
すげなく断られて玉砕。
「美月の様子はどうだった?」
「うん、最初は怒ってた感じだったけど、今は多分落ち着いてる。良夜は美月が好きなのか?」
「親父と同じようなことを言うな」
また後で来ると言って雨竜を泉に戻らせた良夜は、境内の庭を掃いていた美月とばっちり目が合ったものの――ぷいっと顔を逸らされて、小さくため息をついた。
「美月」
「…おはようございます。もう朝餉は食べてしまいましたから、お主の分はありませんよ」
「ん。ところでまだ怒っているな?」
指摘されてますます頬が膨れた美月は、箒をどんと地面に差して腰に手をあてて居直った。
「それが何か?」
「いや、すまなかった。お前があまりにも可愛い顔をしていたから」
「!そ、そこらの女にかけるような口説き文句など吐き気がします!一緒にしないで!」
「お前まさか俺の噂話を耳にしているな?あれには尾びれ背びれがあって…」
「その噂話とやらを総合してもお主が果てしない女遊びをしている事実に変わりありません。女を抱きたいのであればよそをあたって下さい」
何故か微妙に焦った良夜は、美月の手から箒を奪い取って境内を掃きながら呟いた。
「今まではそうだった。これからは…やめる」
「何故やめるのですか?探し求めている女を探し当てるには必要なことなのでは?」
そう問われると――何故やめると言い出したのか自らが理解できなくなった良夜が言葉に詰まって無言で庭を掃いていると、美月は肩で息をついて塵取りを差し出した。
「…とにかく軽い気持ちで私に手を出そうとしたことはもう咎めません」
「それは良かった。礼に何かしたいが…」
「結構です」
すげなく断られて玉砕。