千一夜物語-森羅万象、あなたに捧ぐ物語-
美月が良夜の父に挨拶をしに来たため、新たな相談役が就いたことが百鬼たちに明かされた。

それ以前に良夜が足繁く通っていることを彼らはすでに知っていたため、皆がざわざわすると、良夜の父は皆の前で腕を組んでにかっと笑った。


「相談役は決してお前たちの秘密を俺や良夜に明かしたりはしない。だから話せないことは相談役に聞いてもらうといい」


彼らとて悩みはあり、主に話せないことも多々ある。

相談役はそういった彼らの悩みに助言をすることもあるため――しかもいい女だ。

父の話を縁側でにこにこしながら聞いていた良夜だったが、百鬼たちはあまり近寄らないようにしようとこそこそ話していた。

相談役に手を出すことは禁じられているが――あの良夜が目をつけている女なのだから。


「良夜、お前も百鬼たちが通いやすいように少し配慮をするんだぞ」


「分かった」


即答したもののこれは無理だなと半ば諦めた父が百鬼たちを伴って百鬼夜行に出ると、良夜はぐびぐび酒を飲みながら月を仰ぎ見ていた。

あれから毎日美月と雨竜に会いに通い詰めていたが、妙な夢を頻繁に見るようになっていた。

断片的になのだが…この庭や、この縁側で――微笑みながら語らい合っている夢が多い。

そうかと思えば胸をかきむしるような恋の炎に身を焼かれて苦しみもがいていることもある。

はっとして目が覚めるが、大量の汗をかいていてひどい頭痛がする。

そういう時も美月に会いに行くのだが、いつも額に手をあてられて熱を測られた。


――触れられると、すぐに落ち着く。

それは何かの術のようで、とても不思議だった。


「不思議な女だ」


今までそう思わせた女と出会ったことはなかった。

だからこそ――急速に惹かれていった。
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