千一夜物語-森羅万象、あなたに捧ぐ物語-
大抵夜が来ると良夜は屋敷に帰って行くのだが――この日は長居してしかも仰天発言をした。
「風呂に入って来る」
「え!?困ります!お屋敷に戻って下さい!」
「雨竜についての話を聞きたいんじゃないのか?話が長くなりそうだから、今夜はここで夕餉を食べて風呂に入ってゆっくりする」
「良夜、ここに泊まるの!?じゃあ俺も泊まる!一緒に風呂に入る!」
「お前は駄目だ。茹で上がってしまうからな」
…勝手に話が進んでいる。
しかも雨竜は良夜が泊まっていくと勘違いして大騒ぎして部屋中這い回っているし、良夜はそれを否定せず戸棚を勝手にいじって酒を取り出していた。
「あの…泊まりませんよね?」
「雰囲気によっては泊まっていく」
「雰囲気なんて出ませんからね!とにかく!私は夕餉の準備をしますから、お風呂に入りたければ勝手にどうぞ!」
――実際問題家を建ててくれたのは良夜なわけで、毎日熱い湯に浸かれるのも良夜のおかげで…こうして文句を言う権利は自分にはないのに、思わず憎まれ口が口を突いて出てしまう。
だが良夜は酒を一杯ひっかけた後風呂に向かい、雨竜もついて行ってしまった。
「もうっ!夕餉はひとり分しか用意してなかったのに!」
ぷんぷんしながら美月が蔵に向かって行った頃、良夜は熱い湯に浸かっていた。
雨竜がどうしても離れないため、風呂桶に冷水を張ってその中に入れて楽しんでいると、雨竜が良夜を見上げた。
「良夜は美月のこと好きなのか?」
「何故そう思う?」
「だって雄が雌の傍に居るのは子を作るためだろ?それ位俺だって知ってるもん」
「それは極論すぎるが…そうだな、ちょっと今まで会ったことのない種類の女だな。俺を見てもこびへつらわないし、動じない」
「ふうん、良夜はいい男だもんな。美月と夫婦になったら卵が産まれる?」
「ははは、卵じゃないが、子はできる。あ、こらこっちに来るな。茹で上がって俺に食われたいのか?」
…家の外にもふたりが騒いでいる声が聞こえていた。
食料を籠に入れて戻る途中だった美月は、まるで夫婦みたいだと思ってしまい、首が千切れるほど振ってそれを否定して家に戻った。
「風呂に入って来る」
「え!?困ります!お屋敷に戻って下さい!」
「雨竜についての話を聞きたいんじゃないのか?話が長くなりそうだから、今夜はここで夕餉を食べて風呂に入ってゆっくりする」
「良夜、ここに泊まるの!?じゃあ俺も泊まる!一緒に風呂に入る!」
「お前は駄目だ。茹で上がってしまうからな」
…勝手に話が進んでいる。
しかも雨竜は良夜が泊まっていくと勘違いして大騒ぎして部屋中這い回っているし、良夜はそれを否定せず戸棚を勝手にいじって酒を取り出していた。
「あの…泊まりませんよね?」
「雰囲気によっては泊まっていく」
「雰囲気なんて出ませんからね!とにかく!私は夕餉の準備をしますから、お風呂に入りたければ勝手にどうぞ!」
――実際問題家を建ててくれたのは良夜なわけで、毎日熱い湯に浸かれるのも良夜のおかげで…こうして文句を言う権利は自分にはないのに、思わず憎まれ口が口を突いて出てしまう。
だが良夜は酒を一杯ひっかけた後風呂に向かい、雨竜もついて行ってしまった。
「もうっ!夕餉はひとり分しか用意してなかったのに!」
ぷんぷんしながら美月が蔵に向かって行った頃、良夜は熱い湯に浸かっていた。
雨竜がどうしても離れないため、風呂桶に冷水を張ってその中に入れて楽しんでいると、雨竜が良夜を見上げた。
「良夜は美月のこと好きなのか?」
「何故そう思う?」
「だって雄が雌の傍に居るのは子を作るためだろ?それ位俺だって知ってるもん」
「それは極論すぎるが…そうだな、ちょっと今まで会ったことのない種類の女だな。俺を見てもこびへつらわないし、動じない」
「ふうん、良夜はいい男だもんな。美月と夫婦になったら卵が産まれる?」
「ははは、卵じゃないが、子はできる。あ、こらこっちに来るな。茹で上がって俺に食われたいのか?」
…家の外にもふたりが騒いでいる声が聞こえていた。
食料を籠に入れて戻る途中だった美月は、まるで夫婦みたいだと思ってしまい、首が千切れるほど振ってそれを否定して家に戻った。