千一夜物語-森羅万象、あなたに捧ぐ物語-
それは美月にとってはじめての口付けだった。
だが――良夜が言った通り…はじめてではないという気がした。
現に身体から力が抜けて身を委ねたいという感情が襲ってきて、拒絶できなかった。
そして肩を柔らかく噛まれて――それもはじめてでない経験のような気がした。
「ああ…やっと…出会えた…」
「…?良…夜…」
ふっと唇が離れた時漏らした言葉の意味が分からず至近距離で見つめていると、また唇が重なってきて自然に瞼が閉じた。
…誰かと勘違いしているのだろうか?
だけれど、この唇――この感じ…知っている。
――何度も唇が重なっていると、舌を絡められてびくりと身体が痙攣した。
胸元からするりと良夜の手が忍び込んできて、そこではっと我に返った。
…風呂に入っていないし、自分には待っている男が居るはずだ、と。
物心つく前から、この身もこの心も誰にも許してはならないと何故か知っていた。
だからこそ今――抱かれてはいけない、と思っていた。
「駄目…駄目…!」
胸元に差し込まれた手を押し止めてぎゅっと目を閉じてなんとか否定すると良夜の動きが止まり、唇が離れた。
「駄目…」
「…」
腕の力が緩んだ瞬間に床から抜け出して乱れた胸元を押さえて隠していると、良夜はまたそのまま目を閉じて眠ってしまった。
寝ぼけている男に抱かれる寸前だった――
だんだん怒りがこみ上げてきたが、しらふだったら張り手を食らわしていたものの、寝ぼけた良夜にそれを食らわせるわけにもいかず、足音荒く風呂場に向かって冷たい湯を頭から被って心頭滅却。
「何故私は良夜様にはいつも身を任せそうになってしまうのかしら…」
考えると頭が痛い。
今度は熱い湯を被って檜の匂いがする湯船に頭まで浸かった。
だが――良夜が言った通り…はじめてではないという気がした。
現に身体から力が抜けて身を委ねたいという感情が襲ってきて、拒絶できなかった。
そして肩を柔らかく噛まれて――それもはじめてでない経験のような気がした。
「ああ…やっと…出会えた…」
「…?良…夜…」
ふっと唇が離れた時漏らした言葉の意味が分からず至近距離で見つめていると、また唇が重なってきて自然に瞼が閉じた。
…誰かと勘違いしているのだろうか?
だけれど、この唇――この感じ…知っている。
――何度も唇が重なっていると、舌を絡められてびくりと身体が痙攣した。
胸元からするりと良夜の手が忍び込んできて、そこではっと我に返った。
…風呂に入っていないし、自分には待っている男が居るはずだ、と。
物心つく前から、この身もこの心も誰にも許してはならないと何故か知っていた。
だからこそ今――抱かれてはいけない、と思っていた。
「駄目…駄目…!」
胸元に差し込まれた手を押し止めてぎゅっと目を閉じてなんとか否定すると良夜の動きが止まり、唇が離れた。
「駄目…」
「…」
腕の力が緩んだ瞬間に床から抜け出して乱れた胸元を押さえて隠していると、良夜はまたそのまま目を閉じて眠ってしまった。
寝ぼけている男に抱かれる寸前だった――
だんだん怒りがこみ上げてきたが、しらふだったら張り手を食らわしていたものの、寝ぼけた良夜にそれを食らわせるわけにもいかず、足音荒く風呂場に向かって冷たい湯を頭から被って心頭滅却。
「何故私は良夜様にはいつも身を任せそうになってしまうのかしら…」
考えると頭が痛い。
今度は熱い湯を被って檜の匂いがする湯船に頭まで浸かった。