千一夜物語-森羅万象、あなたに捧ぐ物語-
朝方目覚めた良夜は、そこが我が家ではない場所だと気付くまでに時間がかかった。
ぼうっとしたまま床から出て美月の部屋を覗きに行くと――美月は布団を被って寝ている様子だったため、起こさず居間に腰を下ろして籠の中で寝ている雨竜のつるつるの頭を撫でた。
「…なんだか…とても良い夢を見ていた気がするな…」
右手に何かとてもやわらかいものに触れた気がして掌を見つめていると、むっつりした顔の美月が起きてきた。
まだ半分覚醒していない良夜が言葉もなく美月を見上げたが――相変わらずむっつりした美月は挨拶をすることなく通り過ぎて行って井戸に向かった。
「?あいつなんで怒ってるんだ?」
ついて行ってみると、美月はすっぴんを見られていることも厭わず井戸の前で手拭いで顔を拭きながらぎろりと良夜を睨んだ。
「おはよう」
「…おはようございます」
「怒っているようだがどうした?俺が泊まって行ったからか?」
「…昨晩の記憶がないようですね」
え、と声を上げた良夜の脇を通り過ぎようとしたが、腕を掴まれて仕方なく停止。
まじまじと顔を見られて今すっぴんだと気付いた美月は俯きながら唇を噛み締めた。
「昨晩?確か話をした後眠ってしまって…それから何故か熟睡してしまったようなんだが…まさか何かしたのか?」
「…」
「屋敷以外で熟睡したことなんてないのに」
ぼそっと呟いた良夜は、とりあえず美月が起こっている原因は自分が引き起こしたのだと察すると、腰を少し折って耳元で謝った。
「すまん。何をしたのか覚えていないから教えてくれ」
「…覚えていないのなら、無かったことにしてあげます。次からは私に手を出すと…この爪で刺しますからね」
…手を出した?
ぽかんとした良夜の腕を振り払って家に戻っていく姿を見送っていた良夜、再びぼそり。
「しまった…覚えていないなんてもったいないことをした…」
全然懲りてなかった。
ぼうっとしたまま床から出て美月の部屋を覗きに行くと――美月は布団を被って寝ている様子だったため、起こさず居間に腰を下ろして籠の中で寝ている雨竜のつるつるの頭を撫でた。
「…なんだか…とても良い夢を見ていた気がするな…」
右手に何かとてもやわらかいものに触れた気がして掌を見つめていると、むっつりした顔の美月が起きてきた。
まだ半分覚醒していない良夜が言葉もなく美月を見上げたが――相変わらずむっつりした美月は挨拶をすることなく通り過ぎて行って井戸に向かった。
「?あいつなんで怒ってるんだ?」
ついて行ってみると、美月はすっぴんを見られていることも厭わず井戸の前で手拭いで顔を拭きながらぎろりと良夜を睨んだ。
「おはよう」
「…おはようございます」
「怒っているようだがどうした?俺が泊まって行ったからか?」
「…昨晩の記憶がないようですね」
え、と声を上げた良夜の脇を通り過ぎようとしたが、腕を掴まれて仕方なく停止。
まじまじと顔を見られて今すっぴんだと気付いた美月は俯きながら唇を噛み締めた。
「昨晩?確か話をした後眠ってしまって…それから何故か熟睡してしまったようなんだが…まさか何かしたのか?」
「…」
「屋敷以外で熟睡したことなんてないのに」
ぼそっと呟いた良夜は、とりあえず美月が起こっている原因は自分が引き起こしたのだと察すると、腰を少し折って耳元で謝った。
「すまん。何をしたのか覚えていないから教えてくれ」
「…覚えていないのなら、無かったことにしてあげます。次からは私に手を出すと…この爪で刺しますからね」
…手を出した?
ぽかんとした良夜の腕を振り払って家に戻っていく姿を見送っていた良夜、再びぼそり。
「しまった…覚えていないなんてもったいないことをした…」
全然懲りてなかった。