千一夜物語-森羅万象、あなたに捧ぐ物語-
町を出て狼と雨竜と合流した良夜は、とあることに気付いた。
雨竜の尻尾の先端が何やら白くなっていて、それをつまんでみると…ぺりっと剥がれて思わず手を離した。
「雨竜、お前…脱皮しかけているのか?」
「うん、なんかもう全身痒くてたまらないんだ。ちょっと擦って」
持参の束子でがしがし擦ると恍惚とした表情でくねくねしている雨竜の気が済むまで擦ってやった後、籠に入れて狼に乗り込んだ。
「なあ良夜様。美月の良夜様を見るあの目付き…抱いたのか?」
「いや、それはまだだな」
「そうなの!?だってもうあの顔…良夜様に惚れてるんじゃん?」
「…だが妻にはならないと言われた。…くそ…」
悪態をついた良夜は、美月の手を引っ張って狼に乗り込ませて不機嫌を隠せない声色でその腰を抱いた。
「しっかり手綱を握っていろ」
「はい」
――美月を妻に、と考えたことはなくはなかったが…
拒否をされると独占欲に火がついてしまい、良夜の中で暴れ回っていた。
惹かれ合っているのならば一緒になるのが最善なのに、何故拒否をするのか――やはり待っている男がどうとか言うのが引っかかっているのか。
「…この旅で完全に俺に惚れさせてやる」
「え?今何か言いましたか?」
強風で声が飛ばされて美月が聞き返してきたが、良夜は鼻を鳴らして狼の腹を軽く蹴ると、速度を上げた。
「この辺りはもう九頭竜の居る地域だ。いつ襲われてもおかしくないからお前も警戒しろ」
辺りはもう鬱蒼とした森林地帯で、この辺りが雨竜の生まれ故郷のはず。
つまり、美月の故郷も近い。
「お前もこの近辺の出身だったな」
「そうですけど、別に寄らなくていいです。次代の当主が訪れるなど恐れ多くて皆が縮こまってしまいますから」
美月の父母は健在らしく、事が治まれば会って周りから掌握してじわじわ追い詰めてやるのもいいな、と意地の悪いことを考えながら美月の腰を強く抱いた。
雨竜の尻尾の先端が何やら白くなっていて、それをつまんでみると…ぺりっと剥がれて思わず手を離した。
「雨竜、お前…脱皮しかけているのか?」
「うん、なんかもう全身痒くてたまらないんだ。ちょっと擦って」
持参の束子でがしがし擦ると恍惚とした表情でくねくねしている雨竜の気が済むまで擦ってやった後、籠に入れて狼に乗り込んだ。
「なあ良夜様。美月の良夜様を見るあの目付き…抱いたのか?」
「いや、それはまだだな」
「そうなの!?だってもうあの顔…良夜様に惚れてるんじゃん?」
「…だが妻にはならないと言われた。…くそ…」
悪態をついた良夜は、美月の手を引っ張って狼に乗り込ませて不機嫌を隠せない声色でその腰を抱いた。
「しっかり手綱を握っていろ」
「はい」
――美月を妻に、と考えたことはなくはなかったが…
拒否をされると独占欲に火がついてしまい、良夜の中で暴れ回っていた。
惹かれ合っているのならば一緒になるのが最善なのに、何故拒否をするのか――やはり待っている男がどうとか言うのが引っかかっているのか。
「…この旅で完全に俺に惚れさせてやる」
「え?今何か言いましたか?」
強風で声が飛ばされて美月が聞き返してきたが、良夜は鼻を鳴らして狼の腹を軽く蹴ると、速度を上げた。
「この辺りはもう九頭竜の居る地域だ。いつ襲われてもおかしくないからお前も警戒しろ」
辺りはもう鬱蒼とした森林地帯で、この辺りが雨竜の生まれ故郷のはず。
つまり、美月の故郷も近い。
「お前もこの近辺の出身だったな」
「そうですけど、別に寄らなくていいです。次代の当主が訪れるなど恐れ多くて皆が縮こまってしまいますから」
美月の父母は健在らしく、事が治まれば会って周りから掌握してじわじわ追い詰めてやるのもいいな、と意地の悪いことを考えながら美月の腰を強く抱いた。