君に心を奪われて
天気雨の体育祭
『花菜、頑張ろうな』
そう微笑む君が居た。今日は体育祭だね。
『うん、頑張ろうね!』
『花菜――』
「体育祭、中止!」
お母さんがそう言って、私の部屋から出て行く。
「あれ……?体育祭……中止?」
翼と笑い合っていたのは夢で、大雨が降る今は現実だということをやっと把握することができた。
スマホを見ると、翼からメッセージがきていた。急いで確認をする。
『体育祭中止だって。残念だな』
翼は団長だから特にこの体育祭を楽しみしていたはず。誰よりもショックを受けているのは当然だ。
『そうだね』
簡単に返事を返してもう一度寝ようとすると電話がきた。翼からだ。
「もしもし?」
『ああ、花菜。あとで秘密基地に来てくれないか?』
「うん、いいよ」
『ありがとう。じゃあ、あとでね』
「うん」
電話が切れた。翼と初めての電話はすごくドキドキした。
やっぱり、翼はイケボだよね。声だけで心臓が爆発しそう。
とりあえず、八時まで寝よう。六時に行っても誰も居ないだろうから。
私はもう一度眠りについた。
――花菜。
翼が呼んでいるような気がした。