君に心を奪われて
八時過ぎに目を覚まし、朝食を食べて外へ出た。傘をさして秘密基地へ向かう。
けっこうな大雨で人は通って居ない。一人って、寂しいな。
秘密基地に着くと、ビニール傘が入り口付近に立て掛けてあった。私もその傘の隣に自分の傘を置いた。
中に入ると、翼が簡易ベッドで眠っていた。
寝顔もカッコいいな……。
「うん……花菜……えっ!?」
寝顔を見ていると、翼が目を覚ましてしまった。寝癖が立ってるのも可愛い。
「おはよう、翼」
「うん……おはよう、花菜」
ちょっと寝起きで寝惚けているみたい。そんなところも愛しいなって思う。
「花菜、可愛いな」
「えっ……ありがとう……」
翼は優しい笑顔で私の頭を撫でる。イケメン過ぎる顔に全身が熱くなるような気がした。
「花菜、寝ない?」
「三回も寝るの?」
彼は私の背中に手を回す。鼓動がさらに高鳴る。
「いいじゃん、寝よう」
「……うん」
朝から翼は甘くて、付き合ってる夢でも見てるのかなって思った。でも、これが現実だ。
二人でベッドに入り、また眠りに落ちた。
「花菜……」
愛しい翼の声で目が覚めた。彼は寝惚けた顔で笑っている。
時計を見れば、十一時……十一時!?
「あっ、部活!」
最近私は、部活はまぁまぁいい成績を残したばかりだった。次の試合も絶対に勝ちたいと思っているので、毎回参加している。
「ちょうど曇りだね。今なら自転車で行けそうだよ」
寝惚けた口調で翼が言った。本当に外は晴れてきている。
二階の洗面所で顔を洗う。この小屋は梯子を登ると洗面所とトイレとお風呂がある。それが全部使えるということは、翼の親が払っているのだろうか。
また翼の自転車の後ろに乗り、翼の背中にしがみつく。温かくて気持ちいい。
家に入ると、急いで昼食と着替え済ませて外へ出る。お母さんも外を出て来た。
「また翼くんと遊んでたのね。早く部活へ行きなさい」
「はーい」
「翼くんも花菜をよろしくね」
「はい!」
翼のスマイルでお母さんが狼狽えている。やっぱり翼はカッコいいから仕方ないよね。
翼と一緒に他愛ない話をしながら歩いて学校へ向かう。
「花菜って三回戦まで行けたんだね、すごい!」
「いや、二回戦は不戦勝だからすごくないと思う……」
「ううん、一回戦で初めて自分の力で勝てたんでしょ?すごいじゃん!俺はチームでやるからなぁ」
「翼はそうだったね」
私は卓球部で個人だから私だけがすごいと言われていい気がするが、翼はサッカー部でチームだったからそこまで一人が褒められることはないだろう。
「でも、みんなで勝ちを分かち合えるのもいいよね」
「そうだよな」
「まぁ、一人の方が楽だけど」
「だろうねぇ」
学校に着いて、下駄箱へ向かった。なぜか、翼もついて来た。
「あれ?」
「別にいいじゃんか」
翼と長く居られるならいいと思って深く考えなかった。