君に心を奪われて
「おっ……おい……」
翼を連れて来たのに驚いているのか、顧問の川上先生は固まっていた。
「何で男子を連れて来てんだよ!しかも、受験生だろ!」
そりゃ怒られるよな。まぁ、翼が勝手について来ただけだしね。
「先生、ごめんなさい。俺が勝手について来たんです。花菜を見てていいですか?」
翼、言い方を考えないと変態に感じると思うよ。
「仕方ないなぁ……いいぞ」
「ありがとうございます!」
翼は深くお辞儀をした。こんな私なんて見てもつまらないのに。
「行け、花菜もう一本!」
翼が応援してるのは嬉しいけど、うるさくて恥ずかしいからやめてほしい。
「翼……静かにしてくれる?集中出来ないから」
「あっ、ごめん!静かにしまーす」
私の荷物の隣にちょこんと座る翼が可愛くて笑ってしまう。
「花菜、笑ってないでやれよ!」
「はいはい、やりますよー」
試合の続きを始めようとする。みんなはドン引きしているようだった。恥ずかしい気持ちになる。
大嫌いなヤツには勝てなかったが、まぁまぁ強い左利きの子と一番弱そうなヤツを倒すことが出来た。きっと翼のおかげだと思う。
部活が終わると、一人で座る翼のところへ向かう。
「お疲れ!スゴかったな」
「ありがとう!早く帰ろ?」
「そうだな」
「ありがとうございました!」と言って、部室から出て行く。
「また秘密基地に行くか」
「うん!」
私は翼と一緒に歩いて秘密基地へ向かう。
秘密基地でいろんな話をした。すごく楽しかった。
「花菜、明日は晴れるように願おう?」
「うん、そうだね」
私達は体育祭が無事に出来ることを祈った。