君に心を奪われて



火曜日なのですが、朝から残念なお知らせを聞きました。


「体育祭は明日に延びました」


先生の言葉を聞いてショックを受けた。


登校する時に翼と体育祭の話をしてたのに……。


『スゲー楽しみだな。頑張ろうな、花菜』


きっと翼は教室で落胆してるんだろうな……。


「一時間目は体育祭の振り返りでしたが、出来ないので応援練習に変更しました」


応援練習……!翼に会えるんだ。やったー!


すぐに応援練習で体育館へ向かった。歩く足はすごく軽い。


体育館に行くと、たくさんの生徒が集まっていた。この中から翼を見つけるのは難しい。


並んでリハーサルが始まる。最前列のど真ん中に翼は居た。団長だからね。


「暑い炎天で走り抜けろ。滴る汗は奇跡のように~♪」


リハーサルも楽しかった。君がすごくカッコ良かった。


「花菜」


リハーサルが終わると、翼は私に駆け寄って来た。その笑顔が眩しくて見れないよ。


翼と一緒に生徒玄関の方に移動した。一時間でたくさんのローテーションをするらしい。


「ピッピッピーピッピッピー」


また翼は笛で三三七拍子を吹いている。本当に笛が好きだよね。


「翼って、三三七拍子好きだよね?」


「ふざけてるだけだ!」


翼は逆ギレしてきたのが面白くて私は笑っていた。


「花菜ー練習しよう、ね?」


「分かってますよ」


こうやって翼と話せているのは奇跡だと思う。今更だけど、そう思った。


どうせ、体育祭が終われば関係も終わるだろう。だから話せて良かったと思う。


まだ体育祭が終わってほしくない。このまま、翼と一緒に居られたらいいのに。


――終わらないで、この青春よ。


君の姿を見れるだけでいいと思ってたけど、君と話すうちにどんどん好きになっていくんだ。


私達の関係は、恋人まで行けないのかな……?


体育祭以外で関われるのだとしても、翼は受験で忙しくて無理だろう。


このまま時が止まってしまえばいいのに……。


最後の応援練習が寂しく感じた。




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