君に心を奪われて
翼が台に上がる。ハチマキが風でふわりと浮かんでいる。それが絵になりそう。
「花菜……」
台の上から三角座りをする私を見下ろす。私は顔を上げた。
「君に伝えたいことがあります。叫んでもいいですか?」
よく状況が分からなくて、流れに合わせて頷いた。すると、翼は大きく深呼吸をして……。
「好きだーー!!」
私は理解するのに時間がかかった。
翼が好き……?私のことを……?えっ……?
翼は台から降りて私の目の前に来た。
「だから……付き合ってください!」
自然に涙がポロポロと流れる。これは、嬉し涙だ。
「……私で良ければ」
「もちろんさ。花菜、大好きだよ」
「私も……」
いつの間にか、唇が翼のと重なっていた。これが……キスなんだよね?
周りから歓声が聞こえる。もしも、お母さんがこの場に居たら、どんな反応をするんだろう。
唇が離された時、拍手と歓声が聞こえる。横を見ると、お母さんが立って居た。
「翼……おめでとう」
「母さん!?」
私のお母さんの隣に居たロングヘアーの女性は翼のお母さんだった。やっぱり、美人なんだね。
「花菜、おめでとう!翼くん、花菜をよろしくね!」
「はい!」
私のお母さんの言葉に翼は元気良く返事をした。
本当に最高の体育祭だった――。