君に心を奪われて
私は、やっと部活が終わって背伸びをしていた。本当はそんな暇なんて無い。完全退校時間には出てないといけないのだ。
「花菜、待ってたよ」
出入口の扉に寄り掛かる翼が居た。受験勉強もあるのに待ってくれたんだね。
「お待たせ、翼」
翼の笑顔を見て、さっきまでの疲労感が一気に飛んで行ってしまった。それほど君が愛しい。
二人で走って玄関まで向かった。暗い廊下は少し胸を高鳴らせた。
玄関で靴を履き替えて門まで行った。すると、翼は私の前に手を差し伸べてきた。
「ほら、花菜。早く帰ろう」
「うん!」
私は彼の手を握り、手を繋いで一緒に帰った。
私の家の前に着いた。なぜか寂しさが増してくる。明日も会えるのにね。
「花菜……」
ハイカラに伏した暗い住宅街で私達は唇を重ね合わせた。二人の甘い吐息は夜の町で響いていた。
「花菜、大好きだよ」
「私も、大好き!」
そう言い合って、私達は笑って別れた。
今日も君に恋をする。
明日もまた優しい君に恋をする。
きっといつまでも、君に恋をし続ける。
私達はずっと一緒だと信じているから――。