君に心を奪われて



夕飯を終えた後、翼を私の部屋へ入れた。


「花菜の家族って仲良いよな?」


「まぁ、そうかな?あれが普通だと思ってたんだけど……」


「そっか……」


また翼は辛そうな顔をした。どうして、翼はそんなに暗そうな顔をするの?


「翼……どうしたの?」


「えっ?」


「暗い顔してたから」


なぜか、翼は微笑んだ。その微笑みはすごく切なく思えた。


「俺の家族、ダメなんだよね。特に親父が」


「えっ……」


「親父が俺を嫌がるんだ。俺が居るから大切だった母さんを捨てて行ったんだ。たまに家に来ることもあるけど、俺を見ると親父は殴ってくるんだ。よく夫婦喧嘩も起こる」


私と真逆な翼の家族に私は驚いた。いつもお父さんに殴られて辛い思いをしていたのだろうか。夫婦喧嘩を泣きながら耳を押さえていたのだろうか。翼は計り知れないほど辛い思いをして生きてきたのだろうか。


そう思うと、私まで胸が締め付けられそうになる。


幸せそうな私の家族を見て、翼は辛かったのだろうか。自分ん家とは真逆な私達を見て、羨ましくて悲しくなったのだろうか。


私は翼をそっと抱き締めた。翼も強く抱き締め返す。


「泣いていいんだよ?私は翼を誰よりも愛しているから」


「うっ……花菜……」


私は初めて翼が悲しい涙を流すところ見た。私はもっと強く翼は抱き締めた。




どんなに辛いことがあっても、二人なら乗り越えて行けるはず。


どんな災厄が訪れようとも、私達は二人で乗り越えてみせるから。




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