君に心を奪われて
朝、目を覚ますと、隣に翼が眠っていた。そんな姿が可愛く感じる。
時刻は六時過ぎ。起きるには少し早い時間だ。私はまた横になる。
翼の寝息が私の肌に当たる。いつも朝は冷えて寒いのに、今日はなぜか心地良かった。
私は翼の頭を撫でてみた。すると、翼が起きそうになったのですぐに手を離した。寝起きの翼も可愛い。
「おはよう、翼」
「ん……おはよう、花菜」
私達はゆっくりと体を起こして、下のリビングへ向かった。
翼がテレビをつけて、いつも見ているニュース番組を映した。私は翼が呑気にテレビを眺めている間に味噌汁を温める。湯気が体温を温めてくれる。
しばらくすると、お母さん達が部屋から出てきた。お母さん達は私達の様子を見て絶句した。
「なんか、本当の夫婦みたいだわ……」
「スゲーな……」
お父さんも寝惚けていた目を見開かせていた。そんなに驚くぐらいだったかな?
私はテーブルの上に食卓を並べていく。みんなで席に座って食べた。時折、翼と顔を見合わせて笑った。
翼と私は顔を洗った後、別々の部屋で制服に着替えて、外に出た。少し冷えた風が吹いていた。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
翼と手を繋いで学校まで歩いた。周りの目線を気にせず、私達は他愛ない話をしていた。
二階の階段でいつものように別れた。少し寂しいけど、学年が違うから仕方ない。
私は寂しさと幸せを胸に秘め、自分の教室に入って行った。