君に心を奪われて
世界は残酷
階段の前で翼と別れて教室に行くと、私の机に落書きがされてあった。
『イチャイチャするな』『お前と翼はおかしい』『キモい』
何でこんなことが書かれてあるの?私が誰かに悪いことでもしたの?
机の端っこに『翼と居たら不幸になるよ』って書かれてた。それは、私に忠告でもしているかのようだった。
私は必死に消しゴムで机を消した。陰口には慣れているけど、こんなマジのいじめは初めてだった。
私は翼と居れて幸せなのに、何で不幸になるって言い切れるの?私は翼と一緒に居たいのに。
こんなにも私は翼が大好きなのに、どうして一緒に居ちゃいけないの?
――彼と居たら悪夢に飲み込まれるの。
酷く冷たい声が後ろからして振り向くけど、後ろには誰も居なかった。
――彼は人間じゃない。
声が頭の中に響く。
翼は人間じゃない?翼は人間でしょ?どうして、そう言い切れるの?
――彼は……。
急に言葉は切れた。私はへなへなと自分の席に座った。
何か白昼夢を見ているのかわからないけど、いじめにしてはホラー感があるとは思う。
謎の声が言っている意味が全く分からなかった。
私は授業をボケーと聞き流していた。