君に心を奪われて


学校へ向かう足は重い。今日も昨日みたいに殺されかけるのかな、そう思うと震えが止まらなくなった。


下駄箱に入っていた紙には『シネ』と書いてあった。今日も嫌な予感しかしない。


翼は音楽祭実行委員でいろいろと忙しいみたいで、会う時間も無い。


紙を風間くんに見せると、彼は絶句していた。


「何で、こんなことをするんだ?もう……いじめるヤツの気持ちなんてわかんねぇ」


彼は少し呆れた様子だった。私もそこまでしなくていいと思う。逆に馬鹿らしく見える。




もしも、翼に出会ってなければ。



もしも、あの時にあの湖へ行かなければ。



もしも、私が変な人生を送っていなければ。



こんなことにはならなかったかもしれない。



私はこんなにも酷い世界と自分に嫌気が刺した。






幸い、昼休みは歌練で潰れたので、ボロボロにされる心配はないと思う。



私はまた考える。



どうして、こんなことになったんだろうか。



何がいけなかったのだろうか。



ただ、私達は愛し合ってるだけ。



並行で一生交わることがなかった私達の線が交わっただけ。



なのにどうして、こんなことになってしまったんだろう。



なぜ、ただの幼なじみである茜先輩にいじめられなきゃいけないんだろう。



もう、分からないや……。



私は窓から覗き込み、真下を見た。


私はなぜか、“楽になれそう”だと思っていた。


私は窓から身を乗り出した。



もう、死んでしまおうか……。


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