君に心を奪われて
「翼にどんな能力が使えて制御出来るかもわからない。だけど、私は翼を支えるよ。救うよ。それだけの覚悟を持って話をしたの」
君がもう一度輝けるのならば、その時まで……いや、最期までずっと支え続けるから。
「私はそれほど、翼を愛してる」
「花菜……」
「きっと、お父さんもそれ以上に思ってるよ」
君がお父さんにどんなことをされてきたかわからない。それは、翼を愛していたからだ。翼を守りたかったからだ。
「ねぇ、泣いていいんだよ」
私がそう言うと、翼は子供のように抱き付いて泣いた。やっぱり私達はまだ未熟な子供だ。
私はそんな翼を安心した気分で見ていると、翼の体が光った。私は翼の頭から手を離した。
大きな黒い翼と黒い角に黒いしっぽが生えていた。私は自分の姿に驚く翼を見ていた。
「ああぁぁぁぁああ!」
黒くなった翼がうめき声を上げた。これが本当の姿なのか。
「翼!」
「あれ……」
私が声を掛けた頃には黒い羽も角もしっぽも無くなっていた。
「なんか体が自由に動かせる!」
「えっ?」
「ほら、歩けるよ」
翼が実際に立って歩いていた。リハビリの時の苦しそうな歩き方とは全く違って普通だった。
叫び声を聞きつけたのか、それとも翼の能力なのか、医者や看護師が慌てて入ってきた。立って歩いている翼に驚いていた。
「加藤くん、急遽退院ですね……」
担当医が呟くと、翼は嬉しそうに喜んでいた。
「やっと花菜と学校に行けるね!」
「翼……明日から春休みだよ」
私がそう言うと翼は固まって絶叫した。それほど学校が楽しみだったのだろうか。
「明日も入院する……」
「我が儘言わない!仕方ない運命だから!」
翼の両親が慌ただしい様子で医者と話していた。翼のお父さんはかなり暗そうな顔をした。
「翼、花菜さん……」
私が翼と軽い言い合いをしていると、翼のお父さんが話し掛けてきた。きっと、大事な話だ。
「翼の能力が分かった」
翼のお父さんなら予知で未来のことがお見通しなのだ。それくらい分かっているだろう。
「今回のことは俺にも予知されていなかった。むしろ、まだ翼は入院するという予知だったし、それ以前に交通事故の予知なんてなかった」
「えっ?」
翼のお父さんの言葉に私達は首を傾げた。
「お前の能力は……運命を変える力だ」
運命を変える力……?私はよく分からず、首を傾げていた。