君に心を奪われて
「花菜!」
「あっ、祥也」
あの風間くんと同じクラスになったのだ。本人からのお願いで下の名前で呼んでいる。風間くん……祥也もかなりのイケメンで女子に囲まれることが多い。
よく祥也と話していると斜め後ろから痛い目線がくる。翼がいちいち小さいことで妬くのだ。それも嬉しいのだが。
「何で花菜と仲良くしてんだよ!」
「先輩、アンタをけっこう酷いですよ。花菜がアンタの幼なじみにいじめられて苦しんでいるのに気付かないんですから」
「それは本当に反省してるって!」
「俺も前から花菜が好きだったのにアンタが現れたせいでゲット出来ないじゃないですか」
「俺はお前より花菜を愛してる!お前になんかあげるものか!」
この二人が顔を会わすと私を巡ってバトルが勃発する。そんな様子を私は毎回呆れた様子で見ている。
三人で笑い合える毎日が最高に幸せだ。ずっとこんな風に居られたらいいな。
そんな様子を眺めていて私は思い出した。
翼はたくさん能力を使っている。しかも、私の友達の命を救ってしまった。更に高校のことでも使ってる。もう翼は死ぬんだ、そう考えると怖くなってしまう。
私が翼の袖を引っ張ると翼は優しく微笑んだ。
「ねぇ、初めてのヤツしよう」
翼の言葉に私は首を傾げた。
「初めてのヤツって……」
「アレだよ。男女がこう……一つになるヤツだよ」
私は翼の説明でやっと分かった。アレだよね、男女が……。
「えっ!」
理解すると顔の温度が一気に上昇した。翼と、そんなまだしたくない。まず怖い。
「痛くしないし」
「いや!堂々と誘わないでよ!」
「あっ、そうだな。ごめんごめん」
翼が笑いながら謝った。そんな私達の様子を祥也は死んだ魚の目で見ていた。
「花菜、俺が初めてじゃダメ?」
「ダメ!初めて俺だから」
また二人の言い合いが始まった。しかも、内容が大胆過ぎて嫌になる。
「俺が……」
「やめて!堂々と大胆なことで喧嘩しないで!」
「……ごめんなさい」
私が二人の仲裁に入ると、二人は渋々とした顔で謝った。この二人は仲が良いのか悪いのか分からない。
「花菜はこの俺、加藤翼の物である!」
「ズルい……まぁ、あと数年待てば叶うかもね」
「お前な、人を殺す気か?」
また言い合いが始まりそうな時にチャイムが鳴った。二人が渋々と席に戻るのを私は自分の席で眺めていた。