君に心を奪われて



あれから三ヶ月が経った。私の体に異常が起きていた。最近は吐いてばかりで学校にあまり行けていない。


お母さんに変な検査器を渡されて説明書通りにやった。


「陽性……?」


「ああ、本当だったわね」


お母さんは呆れ顔で私を見た。だけどその顔はどこか嬉しそうにも見える。


「翼くんとヤったんでしょ?それしかあり得ないわ」


「……陽性って何?」


私が目を伏せると、お母さんは私の肩を優しく擦った。


「おめでとう。花菜、子供が生まれるのよ」


「えっ……」


私に子供が生まれる?翼と血が繋がった言葉が生まれるの?


「今、花菜が苦しんでるのはつわりっていうの」


つわりはどこかの小説で読んだような気がする。妊婦さんが散々苦しめられるヤツだ。


「アンタは子供を産んでるの。ちゃんと安静しなさいよ」


私が子供を産んでると言われても現実味が湧かない。私はまだあの日の夢の延長線上にしか思えない。


そんな時にチャイムが鳴った。お母さんはニヤリとして玄関の向かう。


「花菜、見舞いに来たよ!」


案の定、翼が家に来た。お母さんのニヤニヤは全然止まっていなかった。


「翼くん、おめでとう。花菜が子供を産んでるわ」


「えっ?」


突然そんなこと言われたせいで翼は固まっている。理解に時間がかかっているのだろうか。


「えっ!」


やっと理解が出来たのだろうか、翼は大きな声を上げた。


「いやぁ、もう大ニュースだわ。早速お父さんに伝えよう」


お母さんは呑気なことを言って携帯を握っている。お父さんにメールでもしているのだろうか。


「えっ、本当なの?」


翼が私に聞いてきた。私は翼に謎の検査器を見せた。


「陽性だって。これからお母さんと一緒に産婦人科行くけど翼も行く?」


「……行くよ。その子のお父さんとして責任を持たなきゃダメだな」


翼のその顔はとても格好良くて、まさに親の顔になりつつあった。


「俺は花菜もその子も全力で愛する自信がある。俺は二人を幸せにする」


翼がそう言うと、横でお母さんが拍手していた。


「すごいわ、それだけの覚悟を持てるなんて素敵ね。お父さんは産んでると知ってかなり動揺してたもの」


そして、お母さんが椅子から立ち上がった。玄関へ向かう。


「産婦人科へ行くわよ、二人共」


私達はそう言われてお母さんについて行った。




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