君に心を奪われて
俺は来世でも君に出会うのか。来世で俺の子供と結ばれるなんて複雑だなぁ。花菜はあの祥也とかよ……。
もう俺は死ぬのか……。考えるだけで辛い。君の前から消えるなんて出来ない。
子供と幸せな家庭を築きたかった。君と子供でたくさん笑っていたかった。
「何で……こんな力持ってんだよ……」
小説では悪魔が他人に何かをしてあげたら、その人から代償をもらうはずだ。だけど、俺の場合は他人の命を助ければ自分に大きな代償が与えられ、死ぬというのだ。
悪魔なんてただのおとぎ話だと思ってた。自分がその悪魔だなんて思ってなかった。
何で病気なんだよ。交通事故で死んだ方が辛くなかった。花菜もそれが代償だと思えたのだろう。病気の方が残酷だ。
抗がん剤を投与したら、俺はどうなるんだろう。
怖い、ただただ、怖い。体の震えが止まらなかった。
白血病と言えば無菌室だろ?そこで一人ぼっちとか嫌だよ。
最期に子供の顔を見て死にたかった。
俺の運命って何だよ。何でこんな残酷なんだ。
『翼、大好き』
「花菜……花菜……!」
まだ死にたくない。まだ生きたい。君と子供と一緒に生きたいよ。
俺は花菜を愛してる。きっと来世まで持っていく。
世界で一番大切な奴なんだ。それほど、君が愛しいんだ。
「離れたくない……死にたく、ない……」
涙を流しながら窓の夕焼け空を見つめていた。