君に心を奪われて
数日後、俺と花菜と両親は担当医に呼び出されていた。
「HLAを検査の結果、数値すら出ませんでした」
そう言われるのもなんとなく分かっていた。俺の血は悪魔の血だから。
「なので、ご両親のHLAも検査させて頂きました。お母様は普通の数値が出ましたが、お父様は数値すら出ませんでしたので……」
そうだ、俺の親父は俺と同じ悪魔なんだよ。まだ希望があったじゃないか。
「お父様の骨髄と移植するという形になります。たぶん、HLAが一致していると思われます」
それしか方法は無いのだろう。父さんは未来予知が出来る悪魔なのだ。血液も似ているだろう。
「まず、加藤さんに聞きます。造血幹細胞移植しますか?」
どれだけ恐ろしいことだとしてもやるしか無いんだ。父さんに頼ることがきっと父さんへの親孝行かもしれない。
「……やります」
俺の言葉に父さんは目を見開いていた。
「最期に父さんに頼らせてもらうよ」
「翼……」
白い翼と黒い翼を両方持つだろうとこの名前に決めたのはお前じゃないか。少しは……甘えてみたかったんだ。
「お父さん、最期に甘えてもいいですか?」
俺がそう聞くと、父さんは涙を流していた。そして、俺を強く抱き締めた。
「翼……ごめん……こんな父親で……」
父さんは散々俺に酷いことをした。俺に暴力を奮ったこともあった。それでも、俺に名を付けてくれた、愛してくれた父親なのだから。
「父さん、泣かないで……俺は不器用なお父さんでも大好きだから……」
最期に家族の絆を感じられたような気がした。
たとえ、血は繋がってなくとも家族ということは変わらないのだから。