君に心を奪われて
つばさを親に任せて祥也と一緒に学校へ行った。学校に来ると、周りを騒然とした。
『あの人でしょ?大切な人を失って、可哀想だよね』
『学校一のカップルが死亡なんて、彼女もキツイよね』
『彼女の隣に居る男子も狙ってるんだろうな』
周りの噂が痛いほど聞こえてくる。こんな時に翼が居れば、笑い飛ばしてくれたのに。
教室に入ると、私は目を疑った。翼の机の上に一輪の花が入った花瓶が置かれていた。
「酷いよな、こんな……」
祥也が私の背中を撫でてくれた。私は翼の机をそっと撫でながら涙を流していた。
「翼……」
もう苦しいよ。
君が居ない世界など、冬休みも春休みも夏休みの無い無意味な一年間のように、寂しくつまらない。
愛しい人を失った悲しみは消えない。
「翼……」
あの日、君に会って私は変われたんだよ。
毎日が飽きないほど楽しく変わったんだよ。
毎日が幸せで、大好きになれた。
生きようと思えた。
なのに君は、私を置いて行ってしまうのね。
あの黒い翼もいつもみたいに眩しい白い翼もここには居ない。
もうすべてが消えてしまったんだ。
私の世界も同時に色を失った。
子供のつばさが居ても、大好きな翼が居ないと笑顔では居られない。
子供にどう接してあげていいのか分からない。
『好きだーー!』
あの解団式で、君はそう叫んで告白してくれたね。
『愛してる』
君は何度だって言ってくれた。
「何で……」
何で、消えてしまったの?
「花菜!」
祥也の声すら届かない。
私はただ大好きな人を想って泣くだけだ。