君に心を奪われて
そこには息を荒くした祥也が居た。
「花菜、急かしてごめん……」
祥也の言葉に私は目を見開いた。奥さんは静かに私達を見ていた。
「まだ現実が見えていない花菜に変なことを言って悪かった。だけど俺は、お前が好きなんだよ」
祥也が涙を流していた。いつもどこかで助けてくれていた祥也は絶対に涙なんか流さないのに。
「出来れば子供も欲しい。だけど、その前にお前とつばさちゃんを幸せにしたいんだ」
貴方が本当に私と祥也が結ばれるのを望むなら、私は……。
「いいよ……結婚する」
私の言葉に祥也と奥さんは驚いた顔をした。つばさが幸せになれるのなら、私は夫が居た方がいいと思ったのだ。
「花菜……」
「子供のために考えたら一番妥当かなって思っただけだよ」
私は立ち上がって奥さんの方を向いた。そして、頭を下げた。
「色々とありがとうございました。これからも出会うことがあればよろしくお願いします」
奥さんは優しく微笑む。
「じゃあ、お幸せに」
「はい!さようなら!」
私は祥也と一緒に歩き出した。
翼、私は祥也と幸せになるよ。