君に心を奪われて
エピローグ
暖かい小春日和の日に私と司は一緒にお墓参りに来ていた。
別に毎年誕生日で行くからいいけど、私はもう一度その墓を見たかったのだ。
「毎年、こんなところに来るのか。なんか申し訳ないな」
「何で司がそう言うのさ。誰かの命日と重なってるみたいだしね」
司は俯いていた。その理由を聞かずに私はとある墓の前に着いた。
そこには、毎年お母さんが愛しそうに見る名前が刻まれていた。
『加藤翼 享年一七』
私の不思議な名前の理由が知りたいのだ。いつも異質な誕生日を迎える理由も。
「あっ、俺の……」
司は固まって目を見開いていた。本当に今日の司はおかしい。
「どうしたの?司」
「つばさ、あのさ……」
司が小さく微笑んだ。
「俺、前世の記憶を持ってるんだ」
「えっ……」
「俺の本当の名は――」
一瞬、強い風が通り過ぎた。一瞬だけ、司があの家に置かれた謎の写真の人に似ていたのだ。
「―――加藤翼だ」
END