君に心を奪われて



外で体育祭の開会式の練習が行われることになった。


外はかなりの炎天で、暑くて倒れそうなほどだった。


「花菜!」


翼が私に寄ってきた。私も嬉しくて、翼に寄った。


「頑張ろうな」


「うん!」


こうやって男子と笑い合うなんて、去年の私には考えられなかったことだ。本当に幸せだ。


正直、体育祭なんて嫌だと思ってた。でも君が居るから頑張ろうと思える。


こんな幸せ、感じたことが無かった。


好きだって、言えたらいいな。


ずっと一緒に居たいな。


「ピッピッピーピッピッピー」


応援練習になると、また翼はふざけて笛を吹く。そんな彼を見て私は笑った。


「花菜、笑うなよ~」


「たくさん笑えって言ったのはどちら様ですか?」


「調子乗っちゃってー」


端から見れば、カップルだろうか。まさにリア充がやりそうなことだ。


「ピー!!」


「翼、吹きすぎ……」


私が突っ込んでみても、翼は笑顔で返してくれた。やっぱり君が好きだ。


「ピッピッピッピー」


「笛好きだね」


「だから、みんなを楽しませてるんだって!」


意地っ張りなところも好きだなぁって感じる。可愛くて、笑ってしまった。


「もう!早く練習するぞ!」


団長の指示で応援練習を始めた。


たまに目が合うと、お互いに微笑み合った。これがアイコンタクトっていうヤツだ。


「これで応援練習を終わります。ありがとうございました!」


解散してみんな自分の教室へ戻って行く。私はグラウンドで彼を眺めていた


「花菜、行くぞ」


「うん!」


翼と一緒に歩き出した。好奇の目線が突き刺さるが、それを無視した。


「花菜、あんな風に笑ってると可愛いよ」


かっ、可愛い……?


学校一嫌われ者の私が可愛い……?


「本当にお前はいいヤツだ。もっと頑張れよ」


「うん、もっと頑張るよ」


翼はニコニコ笑顔で私の頭を撫でた。鼓動が高鳴ってくる。


「またあとでな」


「うん、またね」


二階の階段で私達は別れて、自分の教室へ向かう。







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