君に心を奪われて
「花菜、やっと来たな」
校門のところで翼は私が来るのを待ってくれたらしい。なんか申し訳ないけど、すごく嬉しい。
「翼、待ってくれてありがとう」
「いや、俺の勝手だから気にしないで」
そんなイケメン発言なんて言われたらドキドキしてしまう。
私達は他愛ない話をして私の家へ向かう。そんな時も痛い視線が突き刺さった。
家でお母さんに了承してもらい、自分のスマホを持ち出した。
「よし、行こう。後ろに乗って」
「えっ?」
「バレなきゃ大丈夫だろ?乗って」
「うん……」
彼の自転車の後ろに乗った。翼の背中はとても温かかった。
幸せだなぁって思える。君ともっと一緒に居たいって思う。
「着いたぞ」
翼の背中にしがみついて居ると、いつの間にか着いてしまった。
自転車から降りて秘密基地に入る。いろんなものが置いてあった。
「テスト勉強を始めようか」
「うん!」
私達はテーブルの前で向き合って座った。翼の顔がカッコいいので、私はドキドキしてしまう。
翼に連立方程式とかわからないところを教えてもらった。さすがに、私は翼の問題が分からなかった。彼は一つ上の三年生だからね。
「花菜、ついでに電話番号教えて」
「うん、いいよ」
私達二人は電話番号とチャットを交換した。チャットならたくさん話せるからという感じ。
「家でもたくさん話そうな」
「うん!」
また数学を教えてもらった。翼の説明は分かりやすくて、問題を楽に解くことが出来た。
「ありがとう、翼。すごく分かりやすかったよ」
「そうか?まぁ……ありがとう」
また二人で吹き出して笑っていた。幸せだなぁって、また思った。
「この歌の歌詞を考えてもらいたいんだけど、いい?」
「いいよ」
翼にお願いされたら断れない。歌詞を考えるのも好きだから大丈夫な気がする。
「じゃあ、二番のは後回しでいいから、お願い!」
「分かった、考えてくるね」
私は翼から歌詞カードをもらった。男子らしい字が書かれている。文字一つさえ愛しく感じるなんて、私は重症だ。
「送って行くよ」
「ありがとう」
自転車で翼の後ろに乗り、翼の背中にしがみついた。
一つの上の先輩である翼をこんなに好きになってしまうなんて思ってなかった。
もし同じ人生を歩むとなるなら全力で否定すると言ったが、翼とずっと居られるなら私はもう否定しない。
私は翼が大好きなんだ。
この人が運命の人だったらいいな……。