転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
「あなた一体何をしているんですか!?」

「何って、だから怪我人になるんだが」

ちらとこちらを見る青年のフードから一瞬だけ目が見えた。切れ長の瞳は濃い赤……ルビーより深い赤茶のアガット。

綺麗な色なのに、酷く翳って見えた。なぜ?良く見えていないから?……本当にそれだけ?

青年は興味を失ったように私から視線を外すと、剣を己の腕に向けて大きく振りかぶった。

「だめっ!!」

「……は!?」

私は、ろくに考えもせずに剣と腕の間に割り込んだ。青年が驚いたようにぴたりと動きを止める。

大きく見開かれたアガットの瞳を見つめながら────私は彼に特大のビンタを食らわせた。

「あなたは!何をしてんのよ!怪我人になるために自分を傷つけるなんて馬鹿なの?て言うかそんな勢いで斬ったら腕もげるでしょうが!?もし噂が全部嘘で私が治せなかったらどうするつもりなのよ!大量出血で死んだらどうすんの!?」

思いっきりビンタをされたせいでフードも襟巻きも吹っ飛んだ青年は目を丸くしてこちらをぽかんと口を開けたまま見つめている。

先程見えた切れ長の瞳、眉はその上に綺麗にアーチを描き、鼻は日本人とは比べ物にならないほどすっと高く通っている。唇はどちらかというと厚めで扇情的だ。世界屈指の人形師が手を尽くしても真似ができないだろうと思われるような、均整が取れ過ぎた驚くほどの美形。
フードから覗いた綺麗な金髪は微かに癖毛で、それが大人びた顔立ちに幼さを絶妙に加えていて何歳なのかいまいちわからない。
< 11 / 100 >

この作品をシェア

pagetop