転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
そんな容姿なのに、今は酷く間抜けな顔をしているから勿体ないが過ぎる。

「……いや……剣の下に飛び込んでくるお前もどうかと思うが」

「うるっさい!ばか!」

「ばか……!?」

青年が絶句する。するとくくくっ、と笑い声が聞こえてきた。

もう1人も顔を隠している物を取ると、堪えられないというように大声で笑い出す。亜麻色の髪にアンバーの瞳をした快活そうな青年だった。

「あーホント、殿下がビンタされてるところとか、初めて見ま……っした……」

息も絶え絶えに、最後辺りはろくに喋れてもいない。

っていうか待って、今なんか凄い大事なこと言わなかった?

「……殿下?」

「ええ、この方はシェバルコ王国の第一王子、グイード・メリアルーラ・シェバルコ殿下ですよ。このご容姿に金髪と赤目を見れば当然おわかりでしょう?」

「え」

「そして私はグイード殿下の側近、シャルキと申します。ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありませんでした」

いやいや流石に嘘でしょ、と鼻で笑おうとしたのだが、顕になった2人の顔を見た途端に周りの人々が皆跪き始めた。

「驚きましたよ、正体がバレて殿下とわかってからも暴言を吐く……失礼、諌言なさるので。初めて見ましたよそんな方」

「あはは、あは……」

冷や汗が背中を伝う。いや、多分知ってたら言わなかったと思います。

えっ、これって不敬罪みたいな感じになっちゃう?……私、牢屋行き?

「貴方がマイカ・クスノキ様で間違いありませんよね。私達は貴方の噂を耳にして、会いに来たんですよ」

「は、あ……」

やばい、身元まで特定されている。逃げられそうにない。
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