転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
「王妃様のお心遣いは大変嬉しく思いますが結構です。本日はお招きいただきありがとうございました!」
王妃の顔は見ない。一応深く腰を折って、侍女を置き去りにして早足に歩き出す。もう自分の部屋とグイード殿下の部屋の場所くらいは覚えている。ちゃんと話さなければいけない、王子本人と。
「殿下っ!」
扉の前の見張りを振り払って部屋に転がり込む。書類の山に向かっていたグイード殿下が息を切らせた私を見て驚いたように顔を上げる。
「一体何事だ?出歩かないように言っているだろう」
「……どういうことですか」
「何がだ?」
「何もかもですよ!幾ら何でも事情を話さなすぎじゃないんですか!」
「は?ああ、パイの事なら」
「違います!いやそれも後から聞きたいですけど!」
ああもう!私は逸る気持ちを抑えるために一度ぎゅっと目を閉じた。
「殿下、“私は一体、何人目の花嫁候補ですか”?」
グイード殿下が目を見開いて答えに詰まったのがわかる。暫くの沈黙の後に発された声はとても小さくて頼りないものだった。
「……お前、それをどこで」
「エスメラルダ殿下に伺いました」
グイード殿下の顔に一瞬憤った表情が浮かんで、それはすぐに怯えに変わった。本人に自覚は無いのだろう。ふんと鼻を鳴らす仕草はいつもと同じように憎たらしかったから。
「ああわかった。それで、お前も居なくなるんだろう」
「さぁ?それは事情を聞かないと何とも言えません」
王子が呆気に取られたように赤の瞳を瞬かせる。
「自分が危ないとわかったんじゃないのか?それもわからないほど頭が弱いわけでもないだろうに」
グイード殿下の視線を辿り、ハッとして震えている手を後ろに隠す。
「わ、わかりましたけど!私は、あなたに話を聞きたいんです。銀の食器を使うように言ったのは私のためですよね?」
王妃の顔は見ない。一応深く腰を折って、侍女を置き去りにして早足に歩き出す。もう自分の部屋とグイード殿下の部屋の場所くらいは覚えている。ちゃんと話さなければいけない、王子本人と。
「殿下っ!」
扉の前の見張りを振り払って部屋に転がり込む。書類の山に向かっていたグイード殿下が息を切らせた私を見て驚いたように顔を上げる。
「一体何事だ?出歩かないように言っているだろう」
「……どういうことですか」
「何がだ?」
「何もかもですよ!幾ら何でも事情を話さなすぎじゃないんですか!」
「は?ああ、パイの事なら」
「違います!いやそれも後から聞きたいですけど!」
ああもう!私は逸る気持ちを抑えるために一度ぎゅっと目を閉じた。
「殿下、“私は一体、何人目の花嫁候補ですか”?」
グイード殿下が目を見開いて答えに詰まったのがわかる。暫くの沈黙の後に発された声はとても小さくて頼りないものだった。
「……お前、それをどこで」
「エスメラルダ殿下に伺いました」
グイード殿下の顔に一瞬憤った表情が浮かんで、それはすぐに怯えに変わった。本人に自覚は無いのだろう。ふんと鼻を鳴らす仕草はいつもと同じように憎たらしかったから。
「ああわかった。それで、お前も居なくなるんだろう」
「さぁ?それは事情を聞かないと何とも言えません」
王子が呆気に取られたように赤の瞳を瞬かせる。
「自分が危ないとわかったんじゃないのか?それもわからないほど頭が弱いわけでもないだろうに」
グイード殿下の視線を辿り、ハッとして震えている手を後ろに隠す。
「わ、わかりましたけど!私は、あなたに話を聞きたいんです。銀の食器を使うように言ったのは私のためですよね?」