転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
「そして7年前、俺が14だった時のことだ。出口のない諍いに業を煮やした国王が王令を下した。王位を継承する条件は『優れた世継ぎを残した者』とする、異論は何も認めない、とね。まあ理屈はわかる。王になれば、王位継承権は子に移るからな。
しかし『優れた』というのは漠然とし過ぎていると思わないか?血筋か?財力か?それとも……もっと違うものか」

確かにわからない。それを判断するのはただ1人。何を以て優れているとするかは国王のみぞ知る所だ。

「エスメラルダ殿下は血筋だと結論づけたようだな。父親が軍の関係者である公爵令嬢を花嫁にしようとしている。まだ正式な婚姻は結んでいないようだが、決まりだろう」

「血筋……」

そうなのだろうか。私は国王陛下に出会った事がないから人柄もわからないし憶測の話しかできないけれど、後ろ盾があるとか、安定した家柄だとか……そんな単純な話ではないような気がする。

「俺は、特別な者が産んだ世継ぎは当然他より秀でた『優れた』者になると思った。だから花嫁には何か他と違う、特別な者を探していた」

「それで、何の身分も無いのに私を?」

「ま、半分は建前だけどな。お前も聞いただろう?あの女の策略のお陰で『禍の王子』なんかに良い所のご令嬢は寄ってこない」

「……っ、本当にあの人って酷過ぎる、自分のために何人も花嫁を……!」

憤って拳を震わせた私に、グイード殿下は何も言わず視線を寄こした。てっきり同意されるものだと思っていたのでその反応の冷たさにたじろぐ。

「俺も一緒だ。毎度新しい花嫁が来る度、エスメラルダ殿下が毒を仕込むとわかっていて見殺しにした。よく考えろよ、お前だって何も知らなかったら食べていただろう?」

余程気に入っているのね、とケーキを口にしない私に王妃が言った言葉を思い出した。グイード殿下やシャルキさんが忠告するのはイレギュラーな事だったのだ。

「もううんざりなんだ。権力のために近づいてくる奴らも、勝手に怖がっていなくなる奴らも、呪術師なんて嘘をついて種が見え透いた奇術を自慢げに披露しては騙そうとしてくる奴らも……全部どうでもいい」

「え、呪術師っていないんですか?あの時……」

呪術師かと尋ねてきたのはそちらではなかったか。

グイード殿下は考えるように少し首を捻って、やがて理解が及んだように薄く嗤った。
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