転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
ドキドキして見つめる私の前で、少女はくすくすと可愛らしく声を立てて笑い始めた。鈴が振るような心地好い声だ。完璧だ、と私は同性としてこっそり身震いした。
「まさか、恐れ多いですわ。今日はお父様についてきましたの。私は家が貴族というだけの名ばかりのしがない令嬢ですわ」
笑う口を押さえる仕草も話し口も上品だ。育ちの良さが滲み出ている。
「すみませんでした。ぶつかってしまって。服とか大丈夫です、か……」
訊いたけど大丈夫じゃなかったらどうしよう。王子に泣きつくしかないかもしれない。冷や汗をかく私をおかしそうに見つめて、少女は考えるように視線を巡らせた。
「大丈夫ですわ。あ……でも一つだけ」
「わ、私にできることでしたら」
「バラ園まで連れて行ってくださいませんか?私、そこで待ち合わせをしているんですけれど、道がわからなくて困っていましたの」
「バラ園……?」
私だってそれほど城内に詳しくない。城の中にいくつバラ園と呼ばれるものが存在するのかはわからないけれど、私が知っているのはエスメラルダ殿下のバラ園だけだ。
いや、だってまさかあそこっていうことはないだろうし。断ろう。衛兵か誰か呼ぼう……と思った私に、少女が碧の瞳を潤ませてにっこりと微笑んだ。
「不安でしたけれど、貴女がいてくれて本当に助かりましたわ……」
その瞬間、性能にはそこそこ自信があった危機感知メーターが凄い勢いで可愛いに振り切れた。
あー駄目だ。可愛い。怪しすぎるけどこれはもう断れない。
私はどこのだれかもわからない少女をエスメラルダ殿下のバラ園まで連れて行くことにした。多分違うだろうけど、その時はその時考えよう────
「まさか、恐れ多いですわ。今日はお父様についてきましたの。私は家が貴族というだけの名ばかりのしがない令嬢ですわ」
笑う口を押さえる仕草も話し口も上品だ。育ちの良さが滲み出ている。
「すみませんでした。ぶつかってしまって。服とか大丈夫です、か……」
訊いたけど大丈夫じゃなかったらどうしよう。王子に泣きつくしかないかもしれない。冷や汗をかく私をおかしそうに見つめて、少女は考えるように視線を巡らせた。
「大丈夫ですわ。あ……でも一つだけ」
「わ、私にできることでしたら」
「バラ園まで連れて行ってくださいませんか?私、そこで待ち合わせをしているんですけれど、道がわからなくて困っていましたの」
「バラ園……?」
私だってそれほど城内に詳しくない。城の中にいくつバラ園と呼ばれるものが存在するのかはわからないけれど、私が知っているのはエスメラルダ殿下のバラ園だけだ。
いや、だってまさかあそこっていうことはないだろうし。断ろう。衛兵か誰か呼ぼう……と思った私に、少女が碧の瞳を潤ませてにっこりと微笑んだ。
「不安でしたけれど、貴女がいてくれて本当に助かりましたわ……」
その瞬間、性能にはそこそこ自信があった危機感知メーターが凄い勢いで可愛いに振り切れた。
あー駄目だ。可愛い。怪しすぎるけどこれはもう断れない。
私はどこのだれかもわからない少女をエスメラルダ殿下のバラ園まで連れて行くことにした。多分違うだろうけど、その時はその時考えよう────