転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
◇◇
「遅かったな!」
「……ちょっと迷ってしまって」
部屋に戻ると憮然とした表情のグイード殿下が足を組み腕を組みふんぞり返っていた。いつもなら王子のくせに態度が悪いですねとか悪態をつくところだったけれど、私はへらりと笑っただけで済ませた。
「嘘を言え。お前は一体どこへ行っていたんだ?折角シャルキの目を盗んで抜け出したというのに……厨房にいなかっただろう」
そう言われて初めてはっとする。何をするために部屋を出たのかすら思い出せないほど、あの少女が言ったことに気を取られていたのだ。
「あー、はは、忘れてました」
「はあ、忘れただと?また記憶喪失か?」
面倒だからやめてくれよ、と皮肉げな口調で言うグイード殿下に私はこっそりと胸を押さえた。罪悪感に心臓が大きく脈打ったのがバレやしないかと冷や汗をかきながら。
本当は、王位継承権が2位ってどういう事ですか、と出会った時に訊ねるつもりでいた。
でも私も違う世界から来たことを黙って、記憶喪失だと嘘をついているのだ。グイード殿下にだって言いたくない事は当然あるはずで。
そう、相手が言おうとしないのだから、問いただすのは良くない────
けれど、自分で真実に辿り着くのならその限りではないだろう。
私は分厚い本をバタンと勢い良く閉じた。その拍子に大量の埃が舞い、思い切り吸い込んでしまって激しく咳き込む。
「げほっ、こほっ……またハズレかー」
真紅の表紙に金抜きで書かれた文字は『新・シェバルコ王国の歴史』。
やっぱり気になるものは気になる。おかしな事には何か理由があるはずで、そしてそれは往々にして重大な事である場合が多い。18年も生きればそれくらいはそろそろ悟れてくる。
女子高生の探究心を侮ることなかれ、シェバルコ王国よ吠え面かかせてやるぞ───と意気込み、グイード殿下の目を掻い潜りながら図書館に通うようになって3週間ほどが経つ。
「遅かったな!」
「……ちょっと迷ってしまって」
部屋に戻ると憮然とした表情のグイード殿下が足を組み腕を組みふんぞり返っていた。いつもなら王子のくせに態度が悪いですねとか悪態をつくところだったけれど、私はへらりと笑っただけで済ませた。
「嘘を言え。お前は一体どこへ行っていたんだ?折角シャルキの目を盗んで抜け出したというのに……厨房にいなかっただろう」
そう言われて初めてはっとする。何をするために部屋を出たのかすら思い出せないほど、あの少女が言ったことに気を取られていたのだ。
「あー、はは、忘れてました」
「はあ、忘れただと?また記憶喪失か?」
面倒だからやめてくれよ、と皮肉げな口調で言うグイード殿下に私はこっそりと胸を押さえた。罪悪感に心臓が大きく脈打ったのがバレやしないかと冷や汗をかきながら。
本当は、王位継承権が2位ってどういう事ですか、と出会った時に訊ねるつもりでいた。
でも私も違う世界から来たことを黙って、記憶喪失だと嘘をついているのだ。グイード殿下にだって言いたくない事は当然あるはずで。
そう、相手が言おうとしないのだから、問いただすのは良くない────
けれど、自分で真実に辿り着くのならその限りではないだろう。
私は分厚い本をバタンと勢い良く閉じた。その拍子に大量の埃が舞い、思い切り吸い込んでしまって激しく咳き込む。
「げほっ、こほっ……またハズレかー」
真紅の表紙に金抜きで書かれた文字は『新・シェバルコ王国の歴史』。
やっぱり気になるものは気になる。おかしな事には何か理由があるはずで、そしてそれは往々にして重大な事である場合が多い。18年も生きればそれくらいはそろそろ悟れてくる。
女子高生の探究心を侮ることなかれ、シェバルコ王国よ吠え面かかせてやるぞ───と意気込み、グイード殿下の目を掻い潜りながら図書館に通うようになって3週間ほどが経つ。