転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
辿り着いたのは一番上が見えないような大きさの、眩くて目を細めたくなるほどの豪奢な装飾が施されている扉の前。
近づいて見てみると装飾に使われているのは本物の宝石だった。恐らく日本で普通に生活していたらお目にかかることなどなかったであろう拳大の大きな宝石が惜しげも無くあしらわれている。
これほど飾り立てられているのだ、きっと中にはよほど大切なものが納められているに違いない。
「ここは遥か昔から王族しか入れないと決まっている」
「じゃあ私は駄目なんじゃ……」
「お前は俺の妻になるんだろう?……だからいい」
私に肯定も否定もさせないまま、王子は懐から鍵を出すと開錠した。整備が行き届いているのだろう。彼が扉を押すと軋む音を立てることもなく滑らかに開いていく。
グイード殿下がまだ躊躇している私を誘導するようにゆっくりと歩き出した。私はその軌跡をそのままなぞってついていく。
中は広い一本道だった。派手だった扉と相反して天井も壁も床も全てが真白。息をするのさえ憚られるような静寂の空間。
そしてその壁に等間隔で点々と掛けられた額縁。その中にはそれぞれ肖像画が収まっていた。
王子はそのうちの一つに触れた。金の髪に碧の瞳。目尻に寄った笑い皺に優しそうな人柄が滲み出している。
「先代国王……俺の祖父上だ。そして隣が祖母上」
そう言われ隣の額縁を見る。色味は僅かに違えど、やはり金の髪に碧の瞳。
「ここは歴代の王族の肖像画が飾られている場所だ」
彼の言わんとするところを察して私は歩きながらいくつもの肖像画を見比べていく。そのうちに気づいた。性別、年齢もバラバラではありながら、皆等しく金髪碧眼を誇っているのだ────ただ二人をのぞいて。
一人はグイードだ。金の髪にアガットの瞳。碧の中に不意に現れる赤は否が応でも視線を引きつける。
そしてもう一人は、彼よりもずっと異質だった。肩の辺りで揃えられた真朱の髪はその人の気取らない性格を表しているよう。額縁の向こうからこちらを見つめる瞳は……目の前の王子と同じ赤。肖像画でも判るあたたかな視線。
近づいて見てみると装飾に使われているのは本物の宝石だった。恐らく日本で普通に生活していたらお目にかかることなどなかったであろう拳大の大きな宝石が惜しげも無くあしらわれている。
これほど飾り立てられているのだ、きっと中にはよほど大切なものが納められているに違いない。
「ここは遥か昔から王族しか入れないと決まっている」
「じゃあ私は駄目なんじゃ……」
「お前は俺の妻になるんだろう?……だからいい」
私に肯定も否定もさせないまま、王子は懐から鍵を出すと開錠した。整備が行き届いているのだろう。彼が扉を押すと軋む音を立てることもなく滑らかに開いていく。
グイード殿下がまだ躊躇している私を誘導するようにゆっくりと歩き出した。私はその軌跡をそのままなぞってついていく。
中は広い一本道だった。派手だった扉と相反して天井も壁も床も全てが真白。息をするのさえ憚られるような静寂の空間。
そしてその壁に等間隔で点々と掛けられた額縁。その中にはそれぞれ肖像画が収まっていた。
王子はそのうちの一つに触れた。金の髪に碧の瞳。目尻に寄った笑い皺に優しそうな人柄が滲み出している。
「先代国王……俺の祖父上だ。そして隣が祖母上」
そう言われ隣の額縁を見る。色味は僅かに違えど、やはり金の髪に碧の瞳。
「ここは歴代の王族の肖像画が飾られている場所だ」
彼の言わんとするところを察して私は歩きながらいくつもの肖像画を見比べていく。そのうちに気づいた。性別、年齢もバラバラではありながら、皆等しく金髪碧眼を誇っているのだ────ただ二人をのぞいて。
一人はグイードだ。金の髪にアガットの瞳。碧の中に不意に現れる赤は否が応でも視線を引きつける。
そしてもう一人は、彼よりもずっと異質だった。肩の辺りで揃えられた真朱の髪はその人の気取らない性格を表しているよう。額縁の向こうからこちらを見つめる瞳は……目の前の王子と同じ赤。肖像画でも判るあたたかな視線。