転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
私は肖像画の下に小さく書かれた名前を指で追った。
『メリアルーラ』と。
名前を見る前から本当はわかっていた。これほどに似ているのにどうして間違えられようか。
「俺の……母上だ」
己の母の名をじっと見つめるグイード殿下に私は震える声で問う。
「でも、あなたのお母様はどこにも載ってなかった」
その母親譲りの赤の瞳を見つめながら言葉を重ねる。
「あなたが……王位継承権が2位だというのに関係があるんですか?」
グイード殿下が顔を上げて私のヘーゼルの瞳を真っ直ぐに見据えた。
「やっぱり誰かに何か聞いたんだな。この所、お前は怪し過ぎるだろう」
「ご、ごめんなさい、秘密を探るようなことして……」
しかしグイード殿下は緩慢な動きで首を横に振った。唇には小さな苦笑が浮かんでいる。
「いつかは言うつもりだったんだ。黙っていて悪かった」
「なんで謝るんですか……言いたくない事の一つや二つくらい、皆ありますよ」
「いいや、俺がお前に聞いて欲しいと思っている。だが……言ってもいいのか、悩んでいたんだ。
これを聞けば、お前は俺に引き摺られてしまうだろうから。俺はお前に情で一緒にいてもらうのは嫌なんだよ」
私は胸元をぎゅうっと握り締めた。
まただ。心臓が変に苦しい。もやもやする。
「……変なことを言いますね。情でも何でも、あなたは私にいてもらわないと困るんでしょう。なんで、そんなこと言うんですか」
「確かに俺はお前にいて欲しい。お前だけに、俺のそばにいて欲しい」
息が詰まる。
上っ面だけの、道具に向けた言葉を紡いでいるくせに。あなたは……どうしてそんな熱の篭った目を向けてくるの?
こんなの温度の無い言葉だってわかってるくせに、言い聞かせても言い聞かせても意味は無くて。私は動揺を押し殺せないまま、声を絞り出した。
「だから……それはわかってます」
自分の声が白い床にぶつかって返ってくる。情けないほどに震えた声。
『メリアルーラ』と。
名前を見る前から本当はわかっていた。これほどに似ているのにどうして間違えられようか。
「俺の……母上だ」
己の母の名をじっと見つめるグイード殿下に私は震える声で問う。
「でも、あなたのお母様はどこにも載ってなかった」
その母親譲りの赤の瞳を見つめながら言葉を重ねる。
「あなたが……王位継承権が2位だというのに関係があるんですか?」
グイード殿下が顔を上げて私のヘーゼルの瞳を真っ直ぐに見据えた。
「やっぱり誰かに何か聞いたんだな。この所、お前は怪し過ぎるだろう」
「ご、ごめんなさい、秘密を探るようなことして……」
しかしグイード殿下は緩慢な動きで首を横に振った。唇には小さな苦笑が浮かんでいる。
「いつかは言うつもりだったんだ。黙っていて悪かった」
「なんで謝るんですか……言いたくない事の一つや二つくらい、皆ありますよ」
「いいや、俺がお前に聞いて欲しいと思っている。だが……言ってもいいのか、悩んでいたんだ。
これを聞けば、お前は俺に引き摺られてしまうだろうから。俺はお前に情で一緒にいてもらうのは嫌なんだよ」
私は胸元をぎゅうっと握り締めた。
まただ。心臓が変に苦しい。もやもやする。
「……変なことを言いますね。情でも何でも、あなたは私にいてもらわないと困るんでしょう。なんで、そんなこと言うんですか」
「確かに俺はお前にいて欲しい。お前だけに、俺のそばにいて欲しい」
息が詰まる。
上っ面だけの、道具に向けた言葉を紡いでいるくせに。あなたは……どうしてそんな熱の篭った目を向けてくるの?
こんなの温度の無い言葉だってわかってるくせに、言い聞かせても言い聞かせても意味は無くて。私は動揺を押し殺せないまま、声を絞り出した。
「だから……それはわかってます」
自分の声が白い床にぶつかって返ってくる。情けないほどに震えた声。