転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
こつ、と足音を立てて王子が一歩距離を詰めた。反射的に後ずさろうとした私の肩を掴む。
「わかっていない!お前は何も!」
強い力ではなかった。でも振り解けなかった。
違う、優しい手だったから……逃げられなかった。
「……なにがですか……?」
やめてほしかった。ただの嫌な奴でしかなかったはずなのに、今では何かを言われる度、優しく触れられる度……胸が苦しくなるから。
思えば私は最初から、横柄な態度と意地悪な言葉に弱い部分を隠した、驚く程素直じゃないこの人に惹かれていたのだ。
初めて出会った日、翳る赤の瞳を見てしまったあの瞬間から。
僅かに主張した胸の高鳴りを認めるにはあまりに時間が短くて、ありえないと思ってしまって。相手は王子で自分をまともに相手にする訳が無いと決めつけてからは、意識して思考を停止させていた。
期待して失望するくらいなら、期待しない方がいい。そう、わかっているのに。
「俺は、お前を道具として見ているわけじゃない。一人の……女として見ている。俺は、お前にそばにいて欲しいんだ」
このひとは、私の望む言葉を臆面も無く口にするから……困る。
「初めてなんだ、こんなことを思うのは。お前と会ってから、毎日に色がついた。鮮やかになった。賑やかになった。心が軽くなった。お前が城に来てから少ししか経っていないのに、それより前の自分がもうわからない」
私を見る顔はこちらが釣られるくらいに真っ赤で、耳の端まで綺麗な赤に染まっている。
「俺には初めての感情で持て余しているが、これがきっと『好き』というものなのだろう、と思った」
こつ、と私は一歩近づいた。
「うそ。いっぱい意地悪なことしたくせに」
「……この胸の疼きが何なのかわからなかったんだ。初対面でお前が俺の頬を思いっきりぶった時からだったから、これが何かわかりかねていた」
「あ、あれは……悪かったとは、思ってます……」
赤くなる私を見つめながら、あの時の事を思い出したようにグイード殿下は笑みを零した。
「わかっていない!お前は何も!」
強い力ではなかった。でも振り解けなかった。
違う、優しい手だったから……逃げられなかった。
「……なにがですか……?」
やめてほしかった。ただの嫌な奴でしかなかったはずなのに、今では何かを言われる度、優しく触れられる度……胸が苦しくなるから。
思えば私は最初から、横柄な態度と意地悪な言葉に弱い部分を隠した、驚く程素直じゃないこの人に惹かれていたのだ。
初めて出会った日、翳る赤の瞳を見てしまったあの瞬間から。
僅かに主張した胸の高鳴りを認めるにはあまりに時間が短くて、ありえないと思ってしまって。相手は王子で自分をまともに相手にする訳が無いと決めつけてからは、意識して思考を停止させていた。
期待して失望するくらいなら、期待しない方がいい。そう、わかっているのに。
「俺は、お前を道具として見ているわけじゃない。一人の……女として見ている。俺は、お前にそばにいて欲しいんだ」
このひとは、私の望む言葉を臆面も無く口にするから……困る。
「初めてなんだ、こんなことを思うのは。お前と会ってから、毎日に色がついた。鮮やかになった。賑やかになった。心が軽くなった。お前が城に来てから少ししか経っていないのに、それより前の自分がもうわからない」
私を見る顔はこちらが釣られるくらいに真っ赤で、耳の端まで綺麗な赤に染まっている。
「俺には初めての感情で持て余しているが、これがきっと『好き』というものなのだろう、と思った」
こつ、と私は一歩近づいた。
「うそ。いっぱい意地悪なことしたくせに」
「……この胸の疼きが何なのかわからなかったんだ。初対面でお前が俺の頬を思いっきりぶった時からだったから、これが何かわかりかねていた」
「あ、あれは……悪かったとは、思ってます……」
赤くなる私を見つめながら、あの時の事を思い出したようにグイード殿下は笑みを零した。